何で、こうなったんだっけ…?
エメラルドは店員が持って来たミックスオレとモモンの実をふんだんにあしらったケーキに舌鼓を打ちながら、目の前に座るミツルを一瞥した。
ニコニコと穏やかな笑みを浮かべる少年ー…ミツルはレモネードとナナシの実のパイを口に運んでいる。
もう一度ケーキを口に運び、咀嚼しながらエメラルドは状況整理を始めた。
ミツルと出会ったのは昼も過ぎた頃。
ミナモデパートのお土産店で物色をしていた所に偶然出会った。
「あれ…?」
「お前、確か…」
お互いに顔を見合わせる。
ふわりと風に揺られそうな緑色の髪に優しげな風貌が特徴的な線の柔らかい少年。
長い眉毛が特徴的な少年は黄色い髪を左右に固めている。
さながらその髪型は三日月の様だ。
「エメラルド君…?」
「ミツル…だっけ?」
思い当たった名前を口にした二人はそこまで仲が良い訳ではない。
面識はあるが、会った事があるのは一回だけ。
その時にホウエンの災害でジュカインや図鑑を拾い、届けた人物である事を知った。
けれど、それだけだ。
それだけの関係。
そこに友情はない。
気まずい沈黙が二人の間に流れる。
その沈黙を破ったのは意外にもミツルだった。
「エメラルド君、時間ある?もしもあるんだったらすぐそこの喫茶店でお茶しない?」
「は?」
「結構人気なんだよ。ケーキも凄く美味しいし」
突然の申し出に虚をつかれたエメラルドは目を丸くした。
しかし、断る理由も無い。
大人しくエメラルドは喫茶店へと案内された。
ごくん。
ケーキを飲み込み、ミックスオレを流し込む。
どう会話をしようか。
エメラルドが口を開くよりも早く、これまたミツルが口を開いた。
「エメラルド君はルビー君やサファイアちゃんにお土産を買ってたの?」
「え?ああ、違うよ。これはガンテツさんに買ったんだ」
「ガンテツさん?」
「ジョウト地方のヒワダタウンに住むボール職人だよ。あの人にはお世話になってるから手土産の一つでも持って行かないとね」
エメラルドは肩を竦めて笑うが、理由が良く分からないミツルは首を傾げた。
「ミツルも使った事ない?ルアーボールやフレンドボールみたいな専用ボール」
「ああ、タイプ毎に捕まえやすくするボールや、捕まえると懐きやすくなるボールとか?」
「そうそう。それを作ってるのがガンテツさん。オレはガンテツさんのボールを使ってポケモンを捕獲する事でオーキド博士の研究の手伝いをしてるんだ」
「ああ、それで」
説明をされたミツルは合点がいった様に頷いた。
「ミツルも今度行ってみれば?ボングリを持って行けばきっと作ってくれるよ」
「…うん。そうだね。行くよ、いつか」
一瞬の間があった。
その間を不思議に思いながらもエメラルドはその事には触れずに黙って続きの言葉を待つ。
「でも、今はホウエン地方を回りたい。日差しの下で大地を踏み締めて、潮風に吹かれながらこの自然を感じたいんだ」
昔のボクなら出来なかった。
人よりも弱いこの体では厳しい自然の中を旅する事は出来なかっただろう。
けれどそれは昔の話だ。
今のボクはポケモン達とこのホウエン地方を歩いて旅をする事が出来る。
この地方を全て回る事が出来たら今度は別の地方を旅してみたい。
ミツルの強い眼差しにエメラルドの肌が粟立つ。
ぞくりと感じたその戦慄は覚えがあった。
ポケモンへの信頼の証。
その瞳に宿る輝きの強さ。
その瞳はバトルフロンティアのウコンを思い出す。
無意識に口角が上がった。
「…来いよ、ミツル。いつかお前が旅に出て偶然オレと出会ったら、その時はバトルしようぜ」
不敵な笑みを浮かべると、ミツルは穏やかな微笑みの中に確かな強さを感じさせる眼差しで応えた。
「いつか、必ず行くね。その時が来たらバトルをしよう」
約束は交わされた。
その約束が合図だったかの様に二人は席を立つ。
振り返る事なく喫茶店から出て行った二人の瞳にはいつかの約束を果たすー…そんな光景が映っているのだった。
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咲さんからお誕生日プレゼントを頂きました♪
ありがとうございます!!!
ミツルくんとラルドが出会っていたら仲良くなりそうですよね、と咲さんとツイッターにてお話ししていまして、二人の絡みに目覚めてしまったわけですよ。そしたら咲さんから二人のライバル話しこと約束のお話しをプレゼントしてもらえたのです////
咲さんの書くスペって原作を読んでるみたいで好きなんです。でも、ここまで二人を表現できるなんて///素敵ぃぃぃ.゚+.(´∀`*).+゚.ハウッ
最高のプレゼントです///
咲さんありがとうございました!!!!
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