※狼一方さんと猫な打ち止めちゃんのお話
※原作設定無視、独自世界観注意
※甘いというよりはちょっとエロい、かもしれません

タイトルは「ふたりへのお題ったー」(http://shindanmaker.com/122300)様より。



その大きくて柔らかな茶色の猫耳に噛み跡を残したいと何度思ったことだろう。

人の気も知らず、ちょろちょろと周りを駆け回る猫の少女。聞けば生まれは狼一族の縄張りであるこの森から少し左手に行った所の山の中だという。
山猫という割には随分小柄で油断が絶えず、彼女が訪れた時はいつも以上に周囲への警戒を強めなければならない。この森には自分以外にもたくさんの獣達が住み着いている。

「雨の日にナニやってンだ、オマエは」
「雨の日だからこそこっちに来やすかったんだよ。猫は雨を嫌うから、ってミサカはミサカは得意気に語ってみたり」
「それで水溜りに足取られてつんのめって泥だらけになってりゃ世話ねェな」
「まさかこんな目に遭うとは思わなかった、ってミサカはミサカはこの森の土は水捌けが悪いのかなーと思ってみたり」
「自分のミスを俺の縄張りの所為にしてンじゃねェ」
「あう、バレたってミサカはミサカは苦笑いを浮かべてみる」

妙な口調の猫の少女と出会ったのも今日みたいな雨の日だった。
姉に頼まれたお使いの途中で道を間違え、この森に迷い込んだ猫の少女はそこで狼一族の中でも最強と称される一方通行と出会った。
白い髪に赤い瞳、鋭い牙と爪を持つ純白の狼。彼女と出会った時の一方通行は狩りの途中であり、人の姿を取っていなかった。本来の姿を目の当たりにした少女はその場で気を失った。
青ざめた顔で後退りしながら気を失った少女が、一方通行の目の前で斜面を転げ落ちていった。相手はまだ子供で、しかもあの耳は猫だ。見逃すべきだと思った直後の出来事だった。

「あなたがミサカを助けてくれたのもこんな雨の日だったよね、ってミサカはミサカは思い出してみたり」
「……、」
「あれ、もしかしてもう忘れられてる!?ってミサカはミサカはあなたの冷めた反応に青ざめてみたり…!」
「忘れてねェよ、オマエの醜態はしっかり脳裏に焼き付いて離れねェからなァ」
「あ、あれは仕方ないよ!だってあの時のあなたは、にゃぁッ!?」

段々自分の思考を読まれているような気分になって嫌気が差した一方通行は、傍に座り込んでいた猫の少女――打ち止めの腰の辺りから生えている長くて細い茶色の尻尾を掴んだ。
根本の辺りを親指の腹で強く押すと打ち止めの体が面白いように跳ねる。出会ってからの打ち止めは一方通行の尻尾をよく遊び道具にしているので、そのお返しに時々こうして遊んでやるのだ。

「や、だ、ダメ!あなた、ストップ!ってミサカはミサカは、にゃっ!」
「嫌だって言ってる割にはイイ反応するじゃねェか」
「あ、あなたの意地悪…ッ」
「オマエが喧しいからだ。少しは黙って隣に居ろ。他の獣に見つかりてェのか?」
「そ、そうじゃないけど…ってミサカはミサカはしょんぼりしてみたり」
「…そォじゃねェけど、なンだ」

しおらしくなると尻尾の動きも大人しくなる。何より打ち止めの頭上に生えた大きな猫耳と、彼女自身がチャームポイントだと言ってきかないアホ毛まで一緒に垂れ下がるので実に分かり易い。
掴んでいた尻尾から手を離し、俯いた打ち止めの顔を覗き込むようにして一方通行は言葉を待つ。

「雨の音を聞くと、あの時のことを思い出すから…ってミサカはミサカは正直に答えてみたり」
「斜面を転げ落ちた時の事かよ」
「うん、ってミサカはミサカは頷いてみる。だってあの時あなたが来てくれなかったら、ミサカはあのまま他の狼達に食べられていたかもしれないし…」
「……、」

あの斜面は結構な急勾配だった上に、距離も長かった。しかも斜面の先には、一方通行と同じ狼一族の一員である垣根帝督が居た。
転げ落ちてきた打ち止めが起き上がろうと顔を上げた先に居た真っ黒な狼。その口元に見えた獰猛な牙と、獲物を見つけたという迷いのない瞳を打ち止めは今も忘れられずにいる。
思い出した恐怖を紛らわせるように自身の体を抱き締めて擦る打ち止めを見た一方通行は、小さく舌打ちすると打ち止めの頭を傷付けないようにそっと撫でる。

「あのクソ狼には俺があの後キツく言っておいたから、オマエを狙うことはもォねェよ」
「分かってるよ。それから何度かこっちに遊びに来た時に出会ったけど、何もしてこなかったから」
「それでも怖いのか」
「…あの時の垣根の目を、ミサカは忘れられないみたい、ってミサカはミサカは頷いてみる」

同じ狼でも、本能のままに獲物を求めている時の狼と偶々かち合った狼の印象には差がある。打ち止めと出会った時の一方通行は、狩ったばかりのイノシシを噛み砕いている途中だった。
その光景を見て気を失ったせいで彼女は怖い思いをしたのだ。悪いのは打ち止めを餌として襲おうとした垣根だけではない。一方通行の太く重みのある白い尻尾が、打ち止めの腰回りに緩く回される。

「安心しろ。…この森に居る間は、俺がオマエを守ってやる」
「あなた…」
「だからオマエは余計なことを気にせず、今まで通り俺の尻尾で遊ンで喚いてろ」

あの時のような怖い思いは二度とさせない。助けた事こそ気まぐれだったものの、あの一件以来優しいオオカミさんだと言って懐いてくる打ち止めを煩わしく思ったことはない。
顔を上げた打ち止めと視線を重ねてやれば、打ち止めは一方通行の尻尾の内側で安心したように微笑んだ。

「…あなたがそう言ってくれるなら、お言葉に甘えてってミサカはミサカを包み込んでくれるあなたの尻尾にモフっと抱きついてみたり」

獲物の分配や縄張りの範囲で争いが絶えない狼一族にうんざりしている一方通行にとって、打ち止めという猫との触れ合いは心休まる一時になりつつある。
それを認めるのは癪なので適当に悪態をついてはぐらかしているが、きっとこの少女の瞳は何もかもを見透かしている。だから打ち止めはこうして危険を承知で一方通行の元を訪れる。
尻尾に頬を摺り寄せて嬉しそうに笑う打ち止めの猫耳が目に留まる。噛み跡を残せばさすがに問題視されかねない。ならば、と一方通行は尻尾に夢中になっている打ち止めの猫耳の付け根へ優しく口付けた。

「にゃぅ…っ!?あ、な、…あなた、なな、何を…ってミサカはミサカは、突然のあなたの行動に驚いてみたり!?」
「前から噛み付いてみたかったンだよなァ、この耳に」
「と、突然狼っぽいこと言い出さないで、ってミサカはミサカは怯えてみるけど、っ!」
「俺は生粋の狼だ」
「あ、あなたも、ミサカを食べようとするの…?ってミサカはミサカは突きつけられた現実に困惑してみる」

耳元に低い声で囁きかけながらキスを繰り返していたせいか、次第に声を弱めていく打ち止めに一方通行は動きを止める。
視線を下げると、すっかり頬を赤くして呼吸を僅かに乱し、その大きな瞳をにわかに潤ませた少女の姿がそこにはあった。不安そうに身を捩る打ち止めへ顔を近付けて、一方通行は囁きかける。

「あァ、今からたっぷり味わう事にする」

ぎゅっと目を閉じた打ち止めの唇を塞いだ一方通行の手が、少女の不安視する本能とは別の本能に従って動きを再開する。
打ち止めがその意味を知る事になるのは、全てが終盤に差し掛かった頃のこと。雨が止むまでの間、一方通行はけして獲物を逃がそうとしなかった。





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素敵ぃぃ!
香宮さまがお年玉企画をしていらしたので、狼一方×猫止めをリクエストしました(人´口`●)私好みのパロで、続編が見たくなっちゃうほど大好きになりました♪
野生の動物って怖いですよね。うんうん。
雨が降るたびトラウマな猫止めちゃん。狼一方さん、責任もって嫁にしなさいwww
ああああ、シリーズ化しないかしら。もっと見たいです///
香宮さまに勇気だしてリクして良かったぁ///
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