☆いちゃつきたくなりまして
「もう、汗だらっだら!」 服が肌に触れないようにパタパタと扇ぎながらアイリスが叫ぶ。 サトシのバトルに付き合っていたアイリスが、お水が欲しいとデントに近寄ってきた。 夕食の準備をしていたデントは、一人で特訓しているサトシを視界に、アイリスへ水の入ったコップを手渡しした。 暑い暑いと汗をタオルで拭きながら水を一気に飲むアイリス。
「サトシはバトルに関してだとハードトレーニングなテイストだね。成長するためならノンシャラン(なげやり)な態度はしないタイプってところかな」 「だからって、休憩は必要いらないっていうの!? 信じらんない!」 サトシの半端ないエネルギーについていけない、とアイリスが呆れる。 「さあ、木陰で休んでて? 冷たいデザートを用意するから」 「ありがとう……でも、もう少し此処にいても良い?」 空になったコップをデントに手渡し、そわそわとするアイリスにデントは、 「勿論。でも、暑いよ?」 屋根も無いし、陰も無いのに、と不思議そうにする。 キバゴはサトシたちと楽しげに笑っている。 此処には食材とデントしかいない。 すると、目線を下へ向けていたアイリスが、 「デントの傍にいたいの」 と照れくさそうに呟く。 「……それは、つまり?」 「察してほしいんですけど……」 かかか、とアイリスは耳まで赤くなっていく。 「……ふわあああ! まさかのアメージングな展開!? アイリスからスイートハートタイムを求めてくれるなんてええ!」 感激だよ! と腕を上げ抱きつくデントに驚き、皆に気付かれる、と焦るアイリスだが、抵抗はしなかった。 むしろ嬉しくて頬がゆるんでいく。
「あたし、汗かいてるから! は、離れて!」 「そんなの気にならないよ! アイリスこそ、僕の汗が嫌じゃないかい?」 「う、運動したから体温高いんだけど、暑く、ない?」 「むしろ、こうしてアイリスを抱きしめているけど、暑苦しくない? ちなみに、僕はご満悦だよ」 ぎゅうう、と抱きしめているデントは、背を少し屈めていた。 体勢がどれほどきついのかは、彼より背の低いアイリスには分からない。でも、そこまでして抱きしめてくれるのだ、嬉しくないわけがない。 「なら、もう少しこのままでいたい」 「了解。僕の愛しい人……」 デントの背中へ腕を回して抱きしめ返しながら、アイリスは爪先立ちをした。 少しでもデントが楽になるように、と。 少しでも密着出来るように、と。 満ち足りた思いで爪先立ちをする。
(あー! 愛おしい!) 121229
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