☆ファーストラブ

 
 
 恋愛の話しは嫌いでもなければ興味があるわけでもない。
 けど好奇心はある、ときもある。
 モンメンたちの応援とか、ロマンチックとかなら話したいんだけど。
 食べながら恋について、どうして語っちゃだめなのよ! バカデント!

 恋愛の話しをするデント。
 あたしは木の実を口に含む。
 恋愛について語るデント。
 あたしは木の実を飲み込む。
 恋愛を素敵と言うデント。
 あたしは木の実に齧り付く。

「まだ食べてる……。いい加減、食べるのを止めたらどう?」
「お腹が空いてるんだもん……」
 仕方がないじゃない。止めさせたかったら、愛だの恋だの男だの女だのと、語るのを止めることね。
 だってね、胃の辺りが痒くなって、苦しいのよ。背中が痒くて、体温を求めちゃう。
 それって、きっとお腹が空いてるんでしょ?
「落ち着かないのよね、食べてないと」
 だから、ほっておいて。
「ふむ。……イッツテイスティングターイム!」
 ぱちんっ、指を鳴らすデント。
 耳元で綺麗な音が響く。
「なによ、いきなり」
「恋愛におけるテイストは、そもそも四種類あるという説もあってね。今回の恋愛、モンメンたちは情熱的恋愛ってところかな。そういった恋愛の切っ掛けは、心から始まっているらしい。……でね、アイリスが食べる理由が分かったのさ」
 なぁんか、まためんどくさいのが始まった気がする。
「だから、お腹が空いてるからでしょ?」
「いいや! 僕の推理だとアイリスは勘違いしているんだよ」
 勘違い? 私が勘違いしているっていうの? どの辺が?
「さて、知りたいかな?」
「めんどくさっ、勿体ぶらないでさっさと教えてよ!」
「ずばり! アイリス、君は経験していないのさ!」
「経験? 一体何を、」
「ファーストラブ! 初恋をだよ」

 はつこい?

「だから、胸が苦しくなったり、人恋しいその気持ちがまだ理解できていないことから、お腹が空いた感覚と勘違いしているんだろうね」
「……よく分からないけど、なんか子ども扱いされた気分っ」
「あー……ううん、してないしてない」
 うそ、絶対に子ども扱いしてる!
 デントを睨み続けてると苦笑いされた。ああ、ほら! デントってうそが下手なのよ。
「いや、キュートって意味でだよ。料理人の心をくすぐる天然ものって感じで。……本当、アイリスは可愛いよ」
 なによそれ! 可愛いなんて言われたって嬉しくなんか……嬉しく、なんか?
「…………っっ!!」
 ドクン! 今のは心臓が、動悸が、暴れだした音。
 それが合図になって体が熱くなっていく。
 なによこれ! 苦しい! 誰かに抱きしめてほしい!
 甘えてしまいたい。走り出したい。デントのせいなのに。デントが可愛いなんて言うから、恋愛の話しなんかするから、胸が苦しくて。食べれば落ち着くって思ってたのに、今は唾でさえ飲み込むのがやっとだなんて!
 これって、デントが言ってた、普通の乙女は恋について考えただけで食べ物が喉を通らないってやつじゃ……!
「あ、あれ? アイリス?」
「ひっ! で、デントのバカーッッ!!」
「ええ?! な、なんで?」

 その日から、デントを意識するようになった。




初恋を知った少女。
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