☆ロマンチックの始まり

 
 お店の食料品が少なくなっていた。親しみのある店へと買い出しに出かけた。
 すると、大声で「こんなの森の中に入ればたくさんあるわよっ」と文句を言う少女が一人。
「高すぎ、高すぎる!」赤い木の実を指さし、大口開ける少女に店主はたじたじ。
「だ、だったら森に入ってとってくれば良いだろ」店主は身を縮ませながら反撃する。
 確かに、森に入ればあの木の実はたくさんある。けれど、少女に対してその発言は如何なものか。
 二人へ近付くことにした。僕が代わりに買います、そう言うつもりで。けれど、「たった今まで森に入ってた女の子になんて言いぐさよ! また戻れっていうわけぇ?」
 なんと、既に森に入っていらっしゃった。
 さすがの店主も愕然とする。いや、無理もない。僕も口が開いたまま閉じやしない。
 嘘つくな。口を歪ませて言う店主。
 嘘じゃないわよ。鼻を高々とさせる少女。
 僕が呆けている間に、店主は少女に木の実をタダで手渡していた。貰った少女はそれはもうにこやかに「やった! ありがとう、おじさん」これあげる、そう言ってオレンの実を店主に渡し、手を振って行ってしまった。
「……なんて子だ。オレンの実のほうが貴重だろうに、」
 まったくだ。店主のひとり言に共感し、小さくなっていく背を見つめた。

 僕が知る女性、いや、僕の周りにいる女性かな?
 常に円やかなスイーツの香り。そして果実と生クリームを利用したお洒落。そう女性というフゥレイバァを生かし、魅力的な美しさと可愛らしさを醸し出す。上品な甘いデザートそのもの、のはず。
 けれど、あの少女はどうだろう。
 ストレートで厳しい面を持っているかと思えば、タダで貰った木の実のお礼にオレンの実を譲る大胆なマリアージュ。笑顔の可愛さがハーモニーとなって、店主も思わず打ち解け許してしまったようだ。僕も同じく。
 それに、森は危険だらけだ。店主の言った通り、オレンの実はそう簡単には手に入らないはずなんだ。
 きっと、広い心を持っているんだろう。
 けど、悪意もなさそうだ。善意があってのことでもなさそうだ。
 だとしたら、あの子は素で行動したということになる。
 ああ、そんな自然風味が溢れる女性、僕は見たことがないよ!

 ここに来るのは初めてなのかな?
 軽やかな足どりできょろきょろとしている。
 まるでシャンメリー。跳ねる君の姿にしっくりくる。
 それから、時々見える横顔。目が合わないかと期待している僕。
 あれ? なんだって僕はあの子を追いかけているんだろう。
 早く帰らなきゃいけないのに。
 目はあの子ばかり追いかけている。
 こんな刺激的なテイストは初めてだ。
(どうしよう、声を掛けたいのにタイミングがつかめない……)

 どうやら僕はあの子に興味があるらしい。

 やっと足を止めた、かと思えば、知り合いなのか少年と話している。
 普通なら遠慮して通り過ぎるべきなんだろうけど、僕は少女の個性的な髪から出てきたキバゴに軽く驚いた。それよりも、少女と話す切っ掛けが出来たことに嬉しくなって、キバゴは滅多に見れないから興味津々で。
 先ほどの赤い木の実をキバゴにあげる少女。そういうことか、なんて勝手に推察しちゃったりして、ますます声を掛けたくなったんだ。だからさ、気付くのが遅れちゃったんだよね。キバゴよりも珍しいピカチュウの存在に。あはは、僕としたことが……。



好奇心の対象が増えてもう大変どぅあっ!
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