☆そんな陳腐な愛なんて囁かないで!
唇蝕様にて言葉を借りました。 [じゃじゃ馬姫とお伽話の世界で7題]にて デントがあたしに向けている「愛」は慈愛の愛。 あたしがデントに向けている「愛」は恋愛の愛。 サトシがあたしに向けている「愛」は友愛の愛。 あたしがサトシに向けている「愛」は愛縁の愛。
「アイリス、最近よく食べるね」 キッチンにて、デントが皿洗いをしていたので手伝うことにしたあたし。 「育ち盛りだもん」 シロナさんの別荘のキッチンは本当に広い。 デントは料理が楽しいのか、いろいろあるから使うのが楽しいのか、直ぐにキッチンに行く。だからか、あたしもキッチンに来る。デントと話したいから。構ってほしいから。 「残さず食べてくれるから、僕も作り甲斐があるよ」 「デントの料理が美味しいから。だから辛くても食べきっちゃうのよ」 「ええ? ほめ過ぎだよアイリス」 「でも、いつか食べられなくなるのよね、デントの料理」 旅が終わったら、デントと話すことも出来なくなる。 結構、寂しい。 サトシとも最初より仲良くなれたし、二人といると居心地が良くて、家族みたいで。だから、離ればなれになるのは、心底寂しい。 「寂しくなるわね……」 「なんで? いつでも作ってあげるのに」 いつでも、って。 「ほんっと子供ね。いつかは旅も終わるんだから、そんなこと、出来るわけない」 「出来るよ」 手が止まっていたあたしに、デントが囁く。 「どうしてそう言い切れるの」驚いて顔を上げると、デントと目が合った。 ああ、まさか。届いたのだろうか。あたしの愛が。 「アイリスが僕の家族になれば良いんだよ」 え、えっ、そそそそそれって! 期待して、頬が熱くなっていく。 どうしよう、お皿が手元から落ちてしまいそう。今にも。 「家族って……、」 「ほら、僕らの養子に入れば、毎日作ってあげられるでしょ。アイリスの好きな料理をフルコースするよ」 ね、良いアイデアでしょ? なんて良い笑顔で言うデント。 あたしはあたしで、ぽかんっと口を開ける。 養子? え、養子って? デントが兄であたしが妹? ああ、なるほど。うんうん。そっちの家族ね。あはは! 「うんうん、ポッドとコーンも喜ぶし、本当にそうなったらときめかない? 僕らがファミリーになるって、想像しただけでわくわくするよ!」 「―――ないわぁ」
一気にふさぎ込みました。
(ときめくどころか寒気がするわ!)
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