サトシとデントと映画を観に来た。
　眠り姫を取り込んだ推理もの。デントは探偵心がどうとかで、目をきらきらさせてパンフレットを買っていた。
　そして、今。サトシとデントの間に座るあたしは、キスシーンに顔を赤くしている。サトシはよく分かっていない様子だったけれど、デントは……。
　ちらっとサトシを見てからデントを見る。すると、純粋に感動している映画ソムリエがそこに座っていた。

　上映が終わって。良かった良かったと外へ出る。
　歩きながら、あのシーンが良かった。犯人がまさかあの人だったなんて。ゼブライカが助けに来たシーン感動した。見に来て良かった。と感想を言い合う。
　そして、自ら話題にした。
「でも、どうして寝ているところにキスなんかするの？　あたしだったら怒るけど」キスシーンについて。
「重要な場面だよ」とデント。
「二人が如何に愛し合っているか奇跡を表現したラブロマンス！　あれがなくては物語は完結しなかったはずさ。それが証拠にヒロインは喜んでいた。もうハッピーエンドになったと言っているようなものだったよ！」
　そうだろうか。いくら好きな人でも、寝ているところにキスされて喜ぶ？　どうして？
　―――さっぱり、分からない。

「……おなかすいた」
「また。アイリスってこういう話しになると直ぐにそう言うよね」
「悪い？　だって上映中なにも食べてなかったんだもん。サトシだっておなかすいたでしょ？」
「そうだな、もうぺこぺこ！　なんか食べようぜ？」
「はいはい。次映画を見るときは食べ物と飲み物買おうね二人とも」

　映画見て嬉しそうだったデントが、今は呆れた表情。
　仕方がないじゃない。
　あたしは、好きな人のキスで目覚めるなんて、恥ずかしくて絶対にイヤなんだから！
　寝顔見られてるのに、寝込み襲われてるのに、何が嬉しいんだか！


(現実的に考えてありえないのよ！)
121128