拍手御礼文章壱






ここに入って何年経ったんだろう。


思い出せない位に長く住んでいる此処は、





妙に薄暗くて、妙に無音で。



そして、妙に看守が個性的です。










「おう、みんなよう集まってくれたのう。じゃあ、これから朝会を始めるぞ」

「おいおい、なんでお前が仕切ってんだよ、秀吉」

「ええんじゃ。わしはあくまで司会役じゃからの」




普段は静かな此処も、朝は決まって少しだけうるさい。

と言っても囚人達がわいわい騒いでいるわけじゃなくって、看守達がこぞって朝会とやらで騒いでいるから。




「さて、今日も一日頑張ろうかな」

「てめえが勤しんでるのは看守の仕事じゃなくて長ったらしい日記じゃねえかよ、ど阿呆」

「日記じゃないよ、此処の歴史を綴っているんだ」



特に注意すべき囚人の情報交換をするわけでもなく、各棟の状況を話すわけでもなく、若干喧嘩腰に延々と続く世間話は此処ではちょっとした名物。


でも、一応選りすぐりのエリート看守様らしくって、こんなぐだぐだの朝会でも此処で不祥事は起きたのを聞いたことはない。


私もずいぶん長くいるけれど、一回だって聞いたことはないんだから相当なことなんじゃないかなって思ってたりする。



「余は戻るぞ」

「はい、信長様」

「あ、信長公が帰っちまいましたよ」


「なぜ止めなかった、左近」

「殿。そんなこと言ったって、気付いたらもう出ていってしまってたんですもん」

「大の男が"もん"など使うな気色悪い」

「いつにも増してツンデレですね」



此処にはまともな看守はいないのだろうか。いや、そもそもエリート看守様の道には変な人しか進まないのだろうか。

此処に来て、一番の謎である。



「しゃーないのう。時間も時間じゃし今日はここで終了じゃあ」

「ちっ、結局時間のムダじゃねえか」

「まあまあ。いいじゃないか」

「ったくてめえはいつまでたっても変わらねえなァ」

「はは、ありがとう」

「褒めてねえよ、ど阿呆が」





どんどん、声の数が少なくなっていく。


恐らくみんな持ち場に戻っていったんだろう。



そこに、カツカツと聞こえる足音。

きっとあの人だ。



私がいる区域の担当の、あの看守。




今日はどんなおしゃべりをしてくれるのかな。

今日は機嫌がいいのかな。


足音じゃわからないなあ。





早く来てよ。私の看守さん。










→拍手御礼文弐以降に続く・・・


(私の、看守さんの足音が近付く)








弐 北条氏康
参 毛利元就
髭 竹中半兵衛
伍 立花宗茂
睦 織田信長

捌 《準備中》

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