フられた

別に初めての事じゃないけど


「ごめん。他に好きなやつ出来たんだ」


そう言われるのだってこれで3回目だ

私の高校3年間の生活には失恋の思い出しか無いように思えてくる


「…無残だ。あまりにも」


誰もいない教室で、自分の席に着いて机に肘をつき目頭を押さえる

そうでもしなきゃ、プライドが零れ落ちそうで


「………」


無言のまま時間が過ぎる



ガシャーン



不意に聞こえた激しい音に、ふと目がグラウンドに行く

あぁ、アメフト部


「ずっと練習してんのに、今気付いた」


苦笑いを零して窓まで近づく

教室から見下ろすグラウンドは、実際にそこに立つ時より狭く小さく見えた


「あ」


不意に一人の男子と目が合った

見たことないから多分後輩だろう

しかし背が高い

一人だけ目立ってる、と思う

ていうか纏ってる雰囲気が違って見える


「平良はどこだ?」


さっきの恐らく後輩であろう男子から目を逸らし、クラスメイトの平良呉二を探す

あいつはあいつですぐに分かった

だってほら、分かるでしょ?

あいつ、デブタレ目指してたせいか、ちょくちょくバカみたいな事するんだもん


日が暮れるまでアメフト部が練習している姿を見て、これぞ青春だなって思った

そういえば私、部活入らなかったなぁ


「何か、入れば良かったかな」


今更だけどさ、と自嘲気味た笑みを零す

窓を開け、桟に肘を置き外を眺める


あぁ、いい風


目を細めて風が頬を撫でるのに身を任せる

すると今まで我慢していた涙がぽろぽろと零れ落ちてきた


「あーあ。私のプライドが…」


慌ててそれを拭って、俯く

こういうときに支えてくれる人に傍にいてほしいのに


恋愛って難しいなぁ


そう思ってたけど、今はなんだか清々しい気分だった

きっと涙を流したからだろうな

気持ちが切り替わると、なんだかさっきまでの自分がおかしくなってきた


「ふふっ。なーんだ。私ったらまだまだいけるじゃん」


微笑を浮かべて、もう一度グラウンドを見る

青春なんて、人それぞれだし


「私は、あんたたちよりもちょっとピンクな青春だったんだよ」


あんたたちは違うでしょ

そう呟いてグラウンドを見渡す


その時、またあの背の高い男子と目が合った


瞬間、私の心臓がドキリと跳ねた。気がした

男子は少し目を見開いて私を見る


そんなの、冗談でしょ


顔が熱いだなんて

心臓がバクバクいってるだなんて


フられた事も忘れてその男子を見返す

そしてポーカーフェイスで微笑んで見せた


その後はよく覚えてないけど

ちゃんと窓を閉めて下校したと思う


翌日の昼、昨日の彼が教室まで来て私を呼んだ




命をじました
(信じたくなかったけど、これって恋じゃん)

-end-