「神からの闇の供物だ……受け取れ」
「く、供物……?」

相変わらずアイオーンが言っていることはよくわからない。とりあえず、供物という言葉と綺麗にラッピングされた袋を私に差し出しているところからすると、どうやらこれを私にくれるらしい。不思議に思いながらも袋を受け取れば何やら期待に満ちた眼差しでじっと見つめられた。

「えーっと……」
「どうした、早く闇の鎖を解き放ち、封印されしものを解放させるがいい」
「あ、うん、じゃあ、開けるね」

アイオーンの視線を感じながらも綺麗に施されたラッピングを解き、袋を開く。彼が私に何を贈ってくれるかなんて想像がつかない。いや、そもそも贈り物をすること自体に想像がつかなくて少しどきどきする。まさか変な中二グッズが入っていたりしないだろうか、と一瞬思ったがそれは杞憂に終わった。

「あっ、これって、私が前に欲しいって言ってた……」

袋から出てきたのは可愛らしい髪留めだった。しかも、シンガンの皆と出かけた際に見つけて欲しかったのだが少々値段が高く諦めた物だ。

「わあ、嬉しい!でも、どうして?」
「……ヴァレントゥエインにて貴様からは供物を捧げてもらったからな……それに特に貴様は日々奉仕を行っているから慈悲をくれてやろうと思ったまで……フッ、神であるこの俺から貰えることを光栄に思うがいいッ!」
「そういえば、今日ってホワイトデーだっけ……」

成程、ホワイトデーのお返しにとわざわざ私が欲しがっていたものをくれたらしい。余程、私が喜ぶのを楽しみにしていたのか随分といきいきとした顔をしている。それが可愛くてついつい口元が緩む。アイオーンのこういうところ、本当に可愛いなあ。

「ありがとう、アイオーン」

そう言えば、もっと崇め奉るがいい、とかっこよくポーズを決めて偉そうなことを言ったが、恥ずかしさを誤魔化そうとしているらしいのがほんの少し赤い頬からよく分かった。

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