「あいつ、お前のことが好きらしい」

ロムさんがぽつりと呟いた言葉に思わず耳を疑う。何かの冗談に決まっている。そんな馬鹿な、と言えば困ったようにロムさんは頭を掻いた。

「本当だ」
「いやいやいやいや……そんなわけが……」

私なんかのどこに惚れる要素があったというんだ。私の方は惚れてしまっている。そしてそれをあっちは知っている。恥ずかしいが別にそれは良い。でも、その逆というのは些か考えられない。

「……何で、そう思う?」
「え、だって……私なんかよりもっと他に……」
「あいつは、そのお前がいいそうだ。他の誰でもない、お前が」

そんな馬鹿な。再度そう口にせずにいられなかった。ロムさんは納得のいかない私の腕を少し引き、問題の人物へと視線を向けさせた。偶然にも彼もこちらを向いた。ぱちり、とクロウと目が合った。合ってしまった。たったそれだけのことなのに、とてつもなく恥ずかしくなって慌ててクロウから目を逸らす。ロムさんがあんなことを言うから、まともに見れないではないか。そんな、クロウが私のことが好きだなんて、有り得ないというのに。

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