私は何故此処にいるのだろうか。別にこの島の者達に協力する必要なんてない。オルドレイク様達もこちらへ来られたではないか。そもそも私が派閥を抜け出してきたのは、剣を持ち出した彼を派閥へと連れ戻すためだ。いや、でも、何故私は彼を連れ戻すのだろう。彼は私の夫になる人だったから?しかしそれは派閥が決めたからであって別に好きでもないのに?派閥を裏切った彼をわざわざ?

「どうかしましたか? 顔色が優れないようですが…」
「……いいえ、別に何も」

それならいいんですが。もしも気分が悪くなったら言ってください。そう心配そうに少し笑う彼に苛立つ。ああそういえばこいつのこういう顔は派閥にいた時はほとんど見なかったかもしれない。派閥を抜けたことで人間らしさを取り戻しているようだ。まるで本当に婚約者みたいなことを口走るなんて派閥にいた頃はしなかったくせに。

「今のヤード、凄く彼女の婚約者っぽかった。なんか大人ー、って感じがするかも」
「……私が派閥を抜け出したことでそれも白紙も同然ですがね。私も彼女も、決められたからそうであっただけですよ」

私と同じことを思ったソノラの意見に返す彼の言葉が心にずしりと重く響く。それもそうだ。勝手に決められてそれに従っていただけなのだから、彼が私を愛そうとなんて思わないし、だからこそ私は彼を愛そうなんて思わないだろう。だとすれば、やはり何故私は此処にいるのだろうか。さっさと派閥へ戻ってしまえばいいのに。何故こうも彼の傍にいようと考えてしまうのだろうか。

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