これの続き

彼は如何やら死んだらしい。死に際の事は知らない。知りたいとは思わなかった。それに聞かずとも安易に想像が出来る。彼の事だ。武士らしく死んだのだろう。馬鹿な人だ。そう思う。否、そもそも元から彼は馬鹿だったではないか。馬鹿であったからこそああやって勝手なまま逝ったのだ。

「幸村が好きだったのか」

唐突に彼の友であった男に呼び止められたかと思えばそう問いかけられた。この問いに対して如何答えるか暫し考えねばならなかった。好きだったか。そうだろう。彼を愛していた。自分程にも彼を愛した者は居ないだろうと思うくらいに彼が愛しかった。

「はい。私は幸村様を誰よりも愛していました」

答えれば、そうか、と男は返した。そんな男の表情を見ていると吐き気がした。内から抑えきれないものが溢れ出てきてそれがこのまま男を殺しても可笑しくはない。男を殺したいわけではない。殺意があるわけではない。嗚呼、きっとこの男も同じなのだ。

「されど、同じくらい嫌いでした」
「……何故だ?」

あまりの事に視界が歪みそうになる。腹が立つ。吐き気すら吹き飛びそうになる。彼の時の様な殺意は湧かないが兎に角この場から離れたくなる。

「私、直江様の事も嫌いです」

わざと笑みを浮かべれば男の顔が面白い程に歪んでいくのが分かった。今の答えで男は理解したに違いない。彼も男も同じなのだから。所詮は、己の事しか考えていないではないか。なんて腹立たしい。なんて憎らしい。

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