※15話。サポート役として同行してるルーク妹設定。
「ルーク!」
唐突に名前を呼ばれたかと思えば、すとんと身体に軽い衝撃を感じた。気が付けばなまえが抱き付きこちらを見上げ、目の端に涙をためているが視界に入った。どうやら抱き付く際にパソコンを放り投げたらしく、ちょっとどういうつもりですか!となんとか地面に落ちる前に抱えたらしいギルバートが怒鳴っているがなまえは見向きもしない。
「……なまえ?」
「暢気に名前を呼んでる場合じゃない……私が、どれだけ……っ」
たまっていた涙がぽろぽろと流れ落ち、それを見せまいとするかのようになまえはルークの身体へと顔を埋めた。声も出来る限り殺そうとしているようだが、それでも消えることのない嗚咽がルークの耳へと届き、纏わりつく。
「あーあ、泣かしちゃった」
「泣かしちゃいましたね」
アントニオとタイロンがどこか面白そうに笑って言う。とはいえ、ルークにはその理由が分からない。何がおかしいのだろうか。それになまえが何故泣くのか見当もつかない。すると、見かねたらしい翔悟が困ったように頬をかきながら、口を開いた。
「……ルークはさ、自分のことでいっぱいだったから気が付かなかったんだろうけど、なまえは結構思い詰めてたんだぜ。こんなにもルークが思い詰めてて、ルークの役に立ちたいのに自分には何も出来ないって」
ハッとしてなまえを見つめれば、抱き付かれている手の力を強められた。なまえの涙で自分の服がじわりじわりと湿っていくのが分かる。
(また泣かせてしまったのか……私はなまえに、こんな顔をもうさせたくはなかったというのに)
昔はよく、なまえは泣く少女だった。研究所で実験をすると、どうしてルークばかりそんなことをしなければいけないの私じゃ駄目なの、と泣き喚いては周りを困らせることが多かった。歳を重ねるごとにそれはなくなったが、なまえの泣き顔はルークの心をいつも縛りつけていた。なまえをこの件で同行させたくないのもそれが理由の一つだった。危険なのは勿論、戦う力を持たないなまえを連れてはいけないというのに加えてまたこうして泣くのではないかという懸念があった。そしてやはりそれは、当たってしまったらしい。いや、当ててしまったというべきなのか。
「……すまない、辛い思いをさせたな」
そう囁き、自分と同じ色をした髪へと手を伸ばす。それをゆっくりと、優しく撫でれば今度こそ声を大きく上げてなまえは泣き出した。そうして、もう片方の手でなまえの身体を抱きしめれば再度更に抱き付かれている手の力が強まった。