今日もまた誰かが泣いているのを見た。私はどうしてこうも誰かが泣いているのに遭遇する確率が高いのだろうか。そして、そのたびに私はまるで自分のことのようにその人と同じように泣くのだ。
「少しは落ち着いたか?」
「……はい。すみません、ありがとうございます、菅原先輩」
頭を下げれば、いいってむしろ俺なんかが役に立てるならそれで十分、と菅原先輩は笑う。繋がれた手を思わずぎゅっと握りしめる。私がこうして泣くたびに、菅原先輩は落ち着くまで傍にいてくれる。あまつさえ手を握ってくれる。優しい先輩だと思う。私はバレー部とは何の関わりもない。見ず知らずの後輩相手にこうも真摯に付き合ってくれるなんて、中々出来るものではない。
(菅原先輩といると、すごく安心する)
毎度毎度この調子では私はこれから先どうなるのだろうかと不安で心が押し潰されそうになる。せめて泣いている人を見ても自分も同じように泣くのは止めたい。こんなことでは、一生泣いてばかりになってしまう。その気持ちが余計に私を泣かせるのだが、菅原先輩といるとそれが薄らいでいくのだ。それほどまでに私を安心させてくれる存在だった。
「さてと、じゃあ帰るか」
辺りはもうかなり暗くなっていた。菅原先輩は部活帰りにわざわざ私と付き合ってくれていたのだからこの暗さは当たり前といえば当たり前なのかもしれない。ふと、繋がれていた手の力が緩まる。このままでは菅原先輩の手ははなれていってしまう。そんなの嫌だ。
「あ、あの、菅原先輩っ」
「どうした?」
「手を、」
「手?」
「……お、お願いだから、離さないでくれますか。もう少しだけで、いいですから」
自分でも何を言っているのかいまいち理解ができない。ただ無我夢中だった。菅原先輩と、手を繋いでいたかった。ああでもやはり何を言っているのだろうかと思われてしまうのだろうか。
「…………あー、うん、そうだな、そうするか」
意外にも菅原先輩は少し照れくさそうにそう言って笑った。少し驚いてしまったが、すぐに感謝の言葉と共に一礼する。繋がれた手の力が強まり、再度それに私は安心するのだった。