正直なところ、ただからかうだけのつもりだった。きっと顔を赤くして「そのようなアレは困る」とか言うんだろうなあと思っていた。なのに、私の額に柔らかい感触。こんなの想定外だ。
「……そういう反応されると、私もどうすれば良いのか分からないのだが」
「だ、だって、御剣さんが」
「強請ったのは君だろう」
それとも違う場所の方が良かったのだろうか。ぽつりとつぶやかれた言葉に慌てて首を横に振る。違う場所でも同じ反応だっただろうし、そもそも問題はそういうことではない。
「先程のことが意外か?」
「そ、そりゃあ、そうですよ!」
「私もだ。だが、私とて恋人に対してそうしたい時ぐらいある」
まさかの発言に呆けていれば、御剣さんはおほんとわざとらしく咳をした。その頬が微かに赤く染まっていて、やはりらしくないことをして恥ずかしかったらしいのが窺える。望んでいた恥ずかしがる御剣さんだというのに、今の私にはそれをからかう気持ちはどこかへ吹き飛んでしまって彼以上に赤くなるしかないのだった。