別に君のことを嫌っているわけじゃあないんだよ。
むっとした表情でみょうじは淡々とそう述べる。俺と視線を一向に合わせようとしない。
「だって一之瀬くん、土門くんと仲良いでしょ」
みょうじは土門のことをかなり気に入っているから、どうやら俺に嫉妬しているらしい。その感情は所謂恋愛感情ではなく、友情なのだがそれにしたってこんなふうに想ってもらえる土門はなんて幸せな奴だろう。
「じゃあ、俺とも仲良くなろうよ」
微笑んで手を差し出すが、みょうじは相変わらずの表情だった。ちらりと差し出された手を見たがすぐに視線を逸らした。それほどまでに嫌われているのかと思っていると横からアキが、少し意地をはってるだけだから大丈夫よなまえちゃんってこういうところ子供っぽいから、と小さな声で言ってきた。するとそれが聞こえたらしいみょうじの顔が赤くなった。そのまま子供っぽく、更に視線を逸らす。なるほど、確かに。可愛いなあと思って笑うと、一之瀬くん嫌い、とみょうじに呟かれてしまった。