とまる


「は?お前家あんの?」
エースが発した言葉は、しっかりと疑問を射抜いている。VDOでは攻略組でも補助組でも、家を買って住んだりことができる。ルノの店が良い例だが、あれ程の建物を買うにはそれなりの金、ギルが必要でありーー、とにかく、とくに困難な作業に変わりは無いのだが、シュンの生きる世界はVDOであるということを考えて、「俺は一体どこで寝るんだ」と小さくため息をつかれた時は、思わず苦笑いしてしまった。今も、シュンがAIだということに抵抗が消えた訳ではない。けれど、いなくなるよりはよっぽどいい。
「泊りに来ないか」
「……え?」 
「明日は休みなんだろう?」
手を掴まれ、足早に歩き出す。パージバルとイングラムは球体状態で良いと言った時から姿を表していない。いれば恥ずかしくて手など繋げない。思えばここは、はじめて出会ったバレルアの森であることに気がついた。空腹に、森の動物でもと探していたら、いつのまにかここに行き着いていたのだ。
「……お前、俺が寝たら自動的にログアウトさせられるって知ってんだろ」
「大丈夫だ。ハッキング許可は下りている」
言わずもがなマルチョにであろうが、あんな奴が管理していてVDOは大丈夫なのかとエースは疑いたくなる。まあ、膨大なVDOのセキュリティを掻い潜ることができるのはシュンであるからこそなのだろうが。
「それに、寝かせられないかもしれない」
言葉の意味がわからず、エースは黙って歩いていたが、含んだ意味を理解した時、目の前に現れたモンスターに銃口を向け、一瞬で倒してしまった。「怒りや恥ずかしさでウィルディを扱う癖はやめた方がいいぞ」とシュンが言うが、「誰のせいだよ」と言い返す。明らかに不機嫌な声だが、シュンの手は離すことなく歩き続けた。




2011/06/30
動詞なのに、「止まる」ではなく「泊まる」って形容詞?じゃないか……

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