みる


シュンは心の底から悪かったと思っている。何故なら、今、シュンが居る場所はエース宅であり、招かれながら彼の日記を見つけてしまったからである。エースは飲み物を取ってくるといって戻ってこない。
「さて、どうしたことか…」
日記は黒を基調とした見た目も普通なノートであり、しかし年期も入っていそうで少し汚れている。そう言えば、とこかの偉人は「日記は見られる為にあるのだ」と言っていた気がした。意を決してぱらりとめくり、綺麗な字で書かれた記事を目に通す。
『今日はあいつが俺の家に来たいとか言い出した。一人暮らしだからって変な物がある訳じゃねえけど、あいつと二人きりになるかと思うと…気が進まねえ』
日付は昨日の物だった。「…」に見えるそれは恥ずかしさにイライラして付いた物らしい。
『つうか最近あいつの事しか書いてない気がしてむかつく』
だんだんと怒りで字がきたなくなっていた。が、気にせずに読み続ける。
『あいつが俺に絡んでくるだけで、俺があいつの事ばかり考えてる訳じゃねえよな。くだらねえ寝る』
前から遡って見てゆく事にした。
『急に抱きしめられた。顔が熱いのは気のせいだったと信じたい!』
『あいつが皆居る場所で、急に手なんて握って来やがって、抵抗出来ねえからっていい気になるなよ!』
『もうセクハラで訴える。死ねばいい。キスとか、気持ち悪い!あああ顔が熱い気持ち悪い!!』
「…てっめえなにしてんだよ!」
エースは戻って来るなり、シュンを怒鳴り付けた。トレンチに乗せて持ってきた珈琲とお茶テーブルに置くと、ノートを奪い取ろうとしたがシュンは素早く避けて逃げる。
「てめっ!馬鹿じゃねえの!?プライバシーの侵害だろ!」
「セクハラと一緒に訴えるか?」
「ざけんな!」
顔を真っ赤にして抱き締められるのも構わずにすがりついて来るエースに、いわば衝動的にキスをした。前歯がぶつからないように気をつけて、唇を舐める。エースは驚きに目を見開いて、思考も動きも停止した。ノートは床に落ちてしまったが、もう釣るための餌はいらないのだからいいだろう。きつく結ばれた唇を、焦らずに解してゆく。舐めて吸えば、エースが苦しそうに身をよじった。しばらく愛撫を続ければ、少し開かれた隙に舌を差し込む。
「んんっ、ん!んー!」
「……」
胸を強く叩かれ、このままでは舌を噛み切られる可能性があるため、口を離す。と、身体から力が抜けたらしいエースが寄りかかるようにして抱きついて来た。潤んだ目がしっかりとシュンを捉えて離さない。
「……忘れろ、馬鹿」
「…すまん、無理だ」
エースはつんと口を尖らせ、力強く日記を踏みつけた。
(みたのは心の中)
(と、扇情的な君の目)
『まあ…好きだからいい、かも知れねえけど』



2011/04/24

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