フィルターの先に映る幼なじみ


『なあ、ダン。ずっと訊きてえ事があったんだが』

『ん?なんだよ、エース』

『シュンは…。本当に地球人なのか?』

『は?』

エースの問いはイキナリだった。いや、最初に訊きたいことがあると言っているからイキナリではなかった。だが、内容が意味の分からない、いや意味が理解しにくい内容でダンは首を傾げた
何故幼なじみである友人が地球人では無いと否定されなきゃならないのだろうか。ダンは幼少期より一緒にいる。付き合いはエースよりも長い。彼が地球人だというのはダンが一番知っている。それなのにどうしてそんな問いがエースの口から出てくるのか、理解出来ない

『だってよ。ダンやマルチョと違う感じがすんだよな。ぜってー地球人じゃねえ』

『だったら、何処の奴になんだよ?』

『そりゃあ…。別の次元に住む王族。王子になるな』

ダンの口と眼が大きく開いた。何か言いたいがそれよりもエースの発言がそうはさせなかったらしい。エースはエースできっぱりと発言していた。それが当たり前だという様な顔だ
そんなエースの顔を見て彼は幼なじみの顔を思い出した。ついでに彼の行動や口調など、彼に関するデータをダンなり思い出してみる。だけど疑問に思い彼は首を傾げた

『シュンが王族…?』

『ああ。だってシュンの纏う雰囲気…、オーラか?あれ、なんか煌びやかじゃね』

あんなの王族にしか出せねえよ
と言われてもダンには全然分からない。ダンにはシュンが幼なじみで友人で仲間で同じ地球人にしか見えない。なのに何処をどうやったらエースの様に見えるのだろうか。意味が分からなすぎて頭痛が発生した
そんなダンの事なんか露知らず、エースは茶を一口飲み今まで思っていた事を述べる

『シュンっていっつも輝いてるよな。眩しすぎる。歩き方も綺麗だし、つか立ち姿さえ綺麗だ。接し方とか紳士だしよ。アレはぜってぇ乗馬とか出来るな』

『……』

ダンはダンなりに一生懸命エースの話を聞いた。だが、何故だろうか。ダンにはそんな幼なじみの姿が思い浮かばない。彼が輝いて見えたことなんか一度だってないし、綺麗に見えたことさえない。接し方が年相応には思えてないが紳士ではないし、乗馬をした姿なんか見たことないしそんな話を聞いたことさえない。それなのにどうしてエースにはそんな風に見えるのか全然分からない。そしてエースが言った言葉を元に脳内で幼なじみを作ってみたら、自分の知らない人物になり吐き気がした。まさか冗談ではないか?と思いエースを見るが、エースの顔は平然としていた

『エース…。お前、大丈夫か?てかよ、どうやったらそんな風に見えるんだ?』

『は?つかダンの方が可笑しいんじゃね?今すぐ脳外科にでも行ってこい』

ついでに馬鹿もなおして貰え
と言われてもダンは困る一方だ。正直馬鹿呼ばわれされるのは気にくわない。だが、それ以上にエースの方が馬鹿じゃないかと言いたくなった

『大体さ、シュンって忍者だぜ?つーことはよ、王じゃなくて家来の方があってると思うんだけど』

『シュンが家来だと…?!ふざけるな!彼奴を家来扱いする奴がいたらぶっ殺す!!』

机を思いっきし叩き握り拳を作るエースの顔は、表現がとてもし辛い。一言で言えば、怖い、である。赤とも黒ともいえない火の形をしたオーラを背に纏いダンを睨みつける
そんな恐ろしいエースを見て、ダンは必死に謝った。何故謝らなきゃならないんだ?という疑問を持ちつつただひたすら謝った。ダンにはそんな疑問よりも、今此処で本当にエースに殺されるかもしれないという現実の方が恐怖だった。気付けば机に何度も額をぶつけていた。痛いが耐えた。彼は死ぬよりも耐えることを選んだのだ
そんな必死な謝りのお陰でエースの纏っていたオーラは弱まり、ついには「もういい」と言われる。それを聞いたダンはホッと一息を吐いた。肺に入れた酸素がこんなにも気持ちいいモノなんて産まれて初めてだ。そんなダンとは違い、エースの雰囲気は何故か急変し、重い息を吐いていた

『――だったらな』

『どうしたんだよ、エース?』

『いや、なんつーか。女だったら良かったなって…』

『は?』

ダンは又首を傾げた。先程までエースの会話内容は幼なじみだったのに、何故イキナリ女になりたいという内容なのだろうか。さっぱりだからだ。一言も「話変わるが」の様な単語が吐かれないまま変わられれば、ダンには付いていけない
それでもダンはエースの話を聞こうと努力する。どんな内容でも困った人を放っておけないのがダンの性格だからだ

『女だったらさ、シュンの隣にいても可笑しくないだろ?』

『別に男でも可笑しくねえと思うけどな』

ダンなりに答えればエースは溜め息を吐き「これだから餓鬼は」と言われた。ムカッとする。大体男や女で隣にいる、いられない、と判断するエースの方が餓鬼なんじゃないのか?!と問いたくなったが口を閉じていた。それよりも何故エースが女だったらという願いがあるのかが疑問だった
そう言えば…、前にルノが言っていたよな〜と、ダンは呑気にルノが話していた内容を思い出そうとした。なんだっただろうか。正直女の会話なんて興味無いものばかりだから覚えてない。ただ、ぼんやりとだ。確か…「女の子ってね、好きな人には誰にも分からないフィルターがかかっちゃう事があるの!」だ。当時その意味が分からなかった。今も正直分からない
だが、なんだろう。エースは女じゃなく男だけど、ルノが言った事が当てはまる。もしもそうなら何故女になりたいのか、理由がなんとなくだけど分かった。そういや、シュンの話をしているエースって、どことなく恋愛話をするルノに似ているなとダンは感じた。だからエースに訊く事にした

『エースってさ、シュンの事好きなのか?』

『?!』

ダンは遠回しな言い方を知らないから直球だった。そんな直球な言葉を食らったエースはビクリと身体を震わせる。そんなエースをダンはジッと見る。エースはダンがマトモに見れなくなり俯いた
間違いだったか?とダンは疑問に思ったが、少し顔を上げたエースがコクリと小さくだけど首を縦に振ったのだ。そのエースの顔はとても紅く、本当に幼なじみの事が好きなんだと思い何故か嬉しく感じた














フィルターの先に映る幼なじみ













『2人して何しているんだ?』

と言い幼なじみが現れた。「別に…!」と言いつつ外方を向くのはエースであって、なんでそんな態度をとるのかダンには分からない。だが、エースを見れば見たことのない顔をしていて本当に好きなんだなと感じた。「俺、出掛けてくる!」と適当に言って席を離れればエースが少し慌てた。慌てる理由なんか知らないダンはこっそり幼なじみの顔を見る

(なんだ、此奴等両想いじゃん)

付き合いの長いダンには分かる。ポーカーフェイスが崩れ、満面の笑みで対応する幼なじみの顔が

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