「起きろ、エース」
「っ、んだよ……」
「シュン、ではなかった、エース起きろ」
「だあ、聞こえてるっつうの!うっせえなパーシバ……あん?」
二人に起こされ、うっすら目を開けたエースの表情が瞬き一瞬で驚愕へ変わった。
「俺が二人……!?」
「で、お前が起きたときにはもうこうなってたのか」
「ああ」
不機嫌面のシュンといつも以上に冷静なエース。
明らかにその表情は通常とは反転していた。
まるで中身が入れ替わっているような、否、今二人は入れ替わっている。
その間に各々のパートナーであるイングラムとパーシバルが鎮座していた。
必要最低限の物しか置かれていない質素な部屋に、二人は腰を下ろしている。
「しかしよ、こうやって自分と話す日が来るとは思ってもみなかったぜ」
エースの口調で話したシュンは、隣にいるエースの顔を覗き込んだ。
「俺の中はエースで、エースの中に俺がいる、まったく誰の悪戯だか……」
「そりゃ、ダンだろ」
「……そうだな」
あきれたように溜め息を吐いたエースは肩に乗ったイングラムの方を向く。
「悪いがダン達に今日の予定を変更してもらうように頼んできてくれ、さすがにこれでHEXの奴らにでも会ったら大変だ」
「承知致した。さ、参りましょうパーシバル殿」
「ああ、邪魔者はお暇するか」
ポップアウトしたまま部屋から素早く出ていった二匹をシュンはよくわかってない顔をしたまま見送った。
「なんだあいつら……?」
「エース」
首を傾げたシュンの腕を引いて、エースは不意打ちに口付ける。
「っ、ん!ちょ、ちょ、ま、んんっ……!」
エースの舌が口内で蠢き、柔らかい肉をこすった。
「自分に口付けられて悦いのか?」
小さくふっと笑ったエースにシュンの心臓が跳ねる。
「う、うるせえ!気持ち悪いに決まってんだろ……!つーか、お前は自分にキスしてなんとも思わないのかよ!?」
「……正直気持ち悪い」
そう言ってエースは僅か顔をしかめたが、すぐ薄い笑みを浮かべてシュンに口付けた。
「ん、てめ……!」
シュンは引き剥がそうとするがそのまま指先を絡め取られて引き寄せられる。
その慌てる様子を見たエースは妖艶に笑んでみせると一気に自身の衣服を脱ぎ始めた。
「ばっ馬鹿野郎!てめ、シュン!なにしてやがんだ!」
顔を真っ赤にして止めに入ったシュンにエースは落ち着いた様子でいる。
「なにって脱いでいるんだが」
「アホが!それは俺の体……って脱ぐなああああ!」
全力で止めに入るシュンの手を軽くかわすとエースは上着の肩を落としてするりと抱きついた。
「なっ……!?」
シュンは自身であるというのにそれに動揺して赤くなる。
「いつも俺の前でお前がどれくらい淫靡だか見せてやろうか」
よく覚えておけ、と囁きながらシュンの耳の縁を舌でなぞったエースがさらに煽るように体を波立たせた。
「も、戻った、のか……?」
意識を飛ばしていたエースは触れた真新しいシーツの感触に目を覚ます。
「くっそ、人の体だからってやりたい放題しやがって、っいてて」
腰や足の付け根に走る痛みに顔をしかめたエースはなんとか寝返りを打つと目の前に迫った穏やかな寝顔を睨んだ。
その瞬間、先ほどまで行っていた行為を一気に思い出し、顔を赤面させオーバーヒートする。
「〜〜っ!むかつく……!」
シーツの上にしな垂れるアホ毛を掴むとぎゅう、と引っ張り、少しばかり呻いたシュンの姿にエースは鼻を鳴らした。
「……」
そっと手を離してそのまま髪をなで下ろし、背中に回して白い肌を抱き寄せる。
「……どうした?」
「っうおわ!なっ、てめ起きて……」
「ああ。ずっと起きていたぞ」
突然瞼の開いたシュンに声をかけられて、エースは叫びを上げて身を離そうとした。
しかし、シュンは上体を起こして自分とベッドの間にエースを閉じ込める。
強く痕を残しながら胸元に口付け、尖り始めた乳首をちろりと舐めた。
「ふ、あ、やめ……」
「戻ってからしてないだろう、まあ入れ替わってた時も入れてはいないからな」
今度はちゃんとしよう、柔らかく喉元に噛み付かれながらそう言われて、エースは頷くしかなかった。
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