のむ


暑くて耐えきれず、お茶などの飲料水しか口に出来ない。完璧に夏なのだと、エースは怠くて寝たままで考えた。最近ろくに食品を口にしていない。完璧に夏バテだが、何故か腹も減らないから危険も自覚がなかった。それを唯一心配していたのは、一応恋人である彼だけで。
がちゃりと玄関の開く音がしたが、エースは身を起こさない。薄いシャツに、ズボンも彼には珍しく短パンで、見るに堪えない。そんな姿に、シュンは目を細めた。
「ん」
「…つっめてーな!!」
顔に袋が当てられたかと思えば、顔に冷たさが伝わり、思わず身を起こした。シュンは、手に山ほどの買い物をしたと思われる袋が抱えられている。しかし、何故涼しそうな顔をしているのか、エースは不思議で仕方ない。
「エース、最近ろくに食事していないだろう」
「だからってそんなに食えねえよ」
シュンはエースの言葉に返事をせずに、台所へと歩みを進めた。エースは飽きれたが、喉が乾いたため、シュンの後に続く。
横目でシュンが料理をする姿を見ながら、冷蔵庫からお茶を取り出し、グラスに注いだ。口に流し込むと、口内だけが冷たくなり、暑さが増した気がする。シュンは、気温に何の不満も抱いていないのか、平然と作業を続けていた。
「なんか」
そんなシュンの姿を見ながら、思った事を口にする。
「恋人ってより、親みたいだな」
ぴたりと、シュンの動きが停止した。怒るかもしれないとは思ったが、一気に雰囲気が変わった気がする。
「…あー、ごめん」
謝ってみたが変わらず。エースはどうしようかとシュンの顔を覗き込もうとした。が、それは間違いで、素早くシュンはエースの手首を掴み、腰を引き寄せる。エースは慌てて置ける場所にグラスを置いたが、揺れて少し零れてしまった。
「何す、っん…んく…っはぁ」
ただでさえ暑いのに、引っ付いてキスなんてされたら堪ったものではない。シュンの熱い舌が、折角冷たくしたエースの口内を侵蝕してしまう。エースはといえば、汗臭いだろうと根本的に違う場所を気にして、恥ずかしさから顔が赤くなった。抵抗してもシュンの力は全く緩む事は無く、寧ろ、相当怒ったのか、エースのシャツの中に手を伸ばした。
「んんっ!んー!」
手だけは冷たく、エースの汗ばんだ肌を撫でる。くぐもった声で反論されても、シュンは辞める様子が無い。脇腹から胸へと滑らせ、乳首を摘んだ。爪先で少し引っ掻かれると、エースはびくりと身体を震わせた。腰を引いた手も、ズボンの中に手を這わせてくる。唇を離されたが、抵抗する力など残って居なかった。
「…はぁ…やめろって…」
エースは羞恥と怒りで涙目になっていた。しかしシュンは「エースの親はこんなことをするのか」と、問いかけた。エースは話についていけず、「…は?」と、返す。
「こんなことをされたのか」
「……」
シュンはあくまで真剣らしい。だから、ここまでキレたのかと思うと、何というか更に恥ずかしいものがある。
「……こんな変態な親がいたら犯罪だ!馬鹿か!死ね!手ぇ離せ!」
「……」
シュンが身を屈め、エースの肩口に顔を埋めた。がり、と頭に響く様な音と痛みに何かと思えば、鎖骨に噛み付かれているらしい。しかも止めたと思われた手が太ももを這っている。
「なにしてんだよ!痛え!」
「止まれない」
「俺は体力無えんだよ!…っそうだ腹減ったから!やめろ!」
「……」
しぶしぶといった様子で、シュンは口と手を離した。気づけば更に汗をどっとかいている。少し眩暈がして、またグラスにお茶を流し込んだ。シュンはといえばずっと涼しそうな顔をしている。際中の表情以外は。
(……馬鹿じゃねえの)
赤く火照った顔にグラスを当てて、冷やそうと試みるが、無理だと判断し、顔を洗う為に洗面台へ向かう。ついでにシャワーも浴びたい所だ。
「風呂は後で一緒に入ろう」
声に振り返れば、料理から視線を外さずに平然としている。
「……馬鹿じゃねえのっ!」
危ないと頭では解っていながら、背中に蹴りを一発入れて洗面台へ逃げた。額にまた汗が滲んだ




2011/05/14
こっちの方がたべるっぽかったですね死にたい

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