act.S


活動拠点としている基地の寝室の作りは、ソファとシングルベッドが二つだけと非常に簡素だ。
思いの通り彼は出入り口に近い方のベッドの上で猫のように丸くなっていた。
具合でも悪いのだろうかとひやりとしたがそれは杞憂に終わる。
そっと近づき顔を覗くと平素の凛とした表情は薄れ、まだ幼さの残る寝顔があった。
繁々と眺めながら、付き合いはそれなりに長い彼のこんな無防備な姿を見るのは初めてだなと思う。
ミラの一時脱退の一件以来充分に休めていなかったツケが回ったのだろう、
まだ夕刻にも関わらず深い眠りについているようだった。
あまり間近でじっと見る機会など無かったが、
彼は整った顔立ちをしており伏せられた睫毛は陰が落ちる程長いと知れる。
肩にかかる長い髪も相俟ってこの年頃の少女らと遜色ないように思えた(本人に告げたら憤慨するだろうが)。

「…ぅ、ん…」

彼はこちらの気配に気づくことなく小さい寝息を繰り返す。
肩が上下する度に浅く開いた唇から紅い舌が覗く。
己の中で、何かが爆ぜては底からじわりと広がり靄となる。

「……」

自然に彼の頬の輪郭へと伸びかけた手をシーツに置いて握り締める。
瞑目して、息を吐いた。
数拍数えてゆっくりと瞼を開く。



(良き友でいられるように)



本来の目的を果たすべく彼の名を呼び、細い肩を揺らした。


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