しぬ


身体に受けた衝撃と、頭で思う衝撃は違うものだった。
あれ?俺死んだんじゃねえの?
身体中を自分で触って確かめる。というか自分は何で死んだと思っているんだろう。転落?射殺?撲殺?殺傷?危険な単語を幾つか思い浮かべたが、ピンとくるものはなかった。
「エース」
名前を呼ばれて振り返る。何だか懐かしい。彼は、他人から見ればいつも通りの無表情だったが、エースには泣きそうになっているように思えた。
「シュン?」
手を引かれ、甲にキスされる。いつもなら毛悪寒を感じて殴ったりしているところだが、何故だかそんな気にはならなかった。それだけで、ここは普通の世界では無いと分かる。
「どうしたんだよ、シュン」
「エース、ごめん」
優しく、ゆっくりと抱き締めれ、エースは呆然とした。目の前のシュンは、紛れもなくいつものシュンだ。じゃあ何でここにいるんだよ?
エースは震える手で、シュンの背中に手を回した。暖かい。暖かいのに、ここにいるならきっと。
エースは苦しくなって、咳をした。喉が焼ける様に痛い。手が痙攣して、何度もシュンの背中をひっかく様に動く。苦しいのは。ああ、毒殺か。
エースは涙を流しながら、美しい笑顔を魅せる。咳をまたすると、吐血をしてしまった。拭おうとしたが、その手を止められ、構わずキスをされる。必死に抵抗を試みたが、無理だった。血の中に、違うものが混入している。水銀だなんて、かっこつけやがって。
彼は、愛する人に抱かれて、彼もまた、愛する人を抱いて、また生まれ変わる日を待った。




2011/04/30

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