忍田




最近、近界民の侵攻が多い。
幸いボーダー隊員の近くに出現することが多く、優秀な隊員たちの手により素早く討伐されているので大きな被害は一つもない。

ただ、名前の仕事が増えただけで済んでいる。
各隊の報告整理や分析など欠かせない仕事がどんどん増えていく。ひとつひとつの仕事量は少ないが、塵が積もれば山となるのだ。

「はあーー」
「大きなため息だな」
「忍田本部長……!」

まずい人にため息を聞かれたことを誤魔化すように背筋を伸ばすも、忍田は特に気にしていない様子で微笑む。

「名字はよくやってくれてるよ」
「ありがとうございます……」
苦笑いを浮かべる名前に忍田が手を伸ばす。

何だろうと彼の行動を見ている名前の手をそっと取り、指先に軽い口づけを落とした。

「これからもよろしくな」
「はいぃ……」
さすが大人のイケメンは色気が違うと、一周回って感心する。遠ざかっていく忍田の背中が廊下の先に消えても、惚けた顔は緊まらなかった。



手の指先 賞賛



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