▼ お年頃の苦難


私はいつも氷室先生と行動を共にしている。それは私にも自覚があるし、嘘とか気のせいとかそんなんでもない。
だから生徒の間で私と氷室先生が噂の間とになっているのも分からなくはない。
…だけど

「…小波さん、何かな?その期待に満ちた表情は…」

キラキラとした目で私を見つめるのは、ローズクイーン候補と早くも言われている小波さん。あの桜井兄弟と幼なじみで、いつも可愛らしいアイドルみたいな存在だ。

「先生、先生と氷室先生は…」
「何もないよ」
「って言われると思ってきました!」

でも、実はそうじゃないんでしょ?そう楽しげにいう小波さんは可愛らしいけど、期待されているようなことはないので苦笑いで返す。
氷室先生とは休日にたまーに出かけたり、一緒にお酒を飲んだりするくらいだ。ちなみに、私服の氷室先生は本当にカッコイイ。いや、本当に。いつものスーツ姿もカッコイイけど、私服は柔らかい感じがしていい。

「本当に何もないよ?」
「…でも、先生が氷室先生と歩いてるところ見ちゃいましたよ」
「…いつ?」
「…いつって聞くって事はやっぱり出かけてるんですね」
「うっ…」

やられた!氷室先生ごめんなさい!
でも、私と氷室先生との間には何もない。本当に何もない。親しい友人、と言えるくらいの仲で、お互い好きな事を楽しんでいるような感じだ。この前は私の好きな映画を見に連れて行ってくれたし、その前は氷室先生の好きな指揮者が来日したから一緒に演奏を見に行って。そしてその帰りに一緒にいつものお店でお酒を飲んで。


「いつも何処に行ってるんですか?」

ああ、もう観念しよう…

「…お互いの趣味に付き合ってるかな」
「じゃあ、交互にプランを立ててるんですか?」
「まぁ、そんな感じ」

なんだか楽しそうですね!そう言われて、まぁ確かに楽しいかな。とぼんやりと考えた。

「先生は、氷室先生と付き合ってるんですか?」
「付き合ってはないよ。友達、みたいな感じかな」
「でも、恋人になりたい?」
「…それは考えたことなかったかも」

だってだって、あの氷室先生とお付き合いするなんてそんな…ありえない。もしあったとしても天文学的確立。

「もし先生が氷室先生と付き合ったら、コウくん泣いちゃいますよ」

なんで琥一が出てくるんだろうと思ったけど、それより私は氷室先生と恋人になったらどうなるか考えることに精一杯だった。…考えてみるとなかなかいいかも…。

「失礼します。」

ノックする音と、氷室先生の声。どうぞと声を掛けると、ドアをあけながら氷室先生は話始めた。

「来週私の部…」

部屋に来ませんか。そう続けられるであろう言葉は、小波さんを視界に入れたことによって遮られた。

「どうも」
「…いたのか、小波」

部屋に誘うくらい親しいんですね、と耳打ちする小波さんに、これは私も予想できなかったと返してやりたかった。

「それじゃ、私はこれで」

ごゆっくり。そう楽しみながら去っていく小波さんにげんなりしながら、来週の予定を決める会話をした。



「…琥一、どうかしたの?」

何故か私の前でむすっとしている琥一にインスタントコーヒーを煎れると、琥一はむすっとしたままマグカップに口つけた。

「…生徒と休みの日に出かけんのは、悪ィ事なのか」
「…まぁ、悪くもないし良くもないんじゃないかな。行く場所にもよるけど」
「…なら、よ」

私は、正直琥一が可愛くて仕方がない。

「…今度、どっか行こうぜ」
「…いいけど、どうしたの、急に」

可愛い弟のようなものだ。懐いてくれる、可愛い教え子。

「別に、なんも」

不貞腐れたようにコーヒーをすする琥一は体でかいのにちっちゃい子供みたいで自然と笑みがこぼれた。

「変な子」

でも、可愛いからゆるす!










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