(盗賊/学パロ)

朝から他校の学生に覚えてもいない理由で喧嘩を吹っかけられ学校を遅刻。その時間に試験だった所為で居残ること一時間。ようやく帰れると思ったら文化祭実行委員に生徒会室まで拉致されて放課後全ての時間を費やした。今日を厄日と言わずなんと言う。本当に最悪な1日だった。朝の喧嘩で作った傷を保健室で手当てしてもらったが、まだずきずきと痛む。風呂に入ったら染みるだろうなあと嘆きながらベッドに飛び込むために早足で家に向かった。俺の愛するベッドに今日の鬱憤をこれでもかというほどぶつけてやろう。つまり早く寝たい。そんなことを考えながら丁度最寄り駅の目の前を通ると、胸ポケットの中に入れていた携帯のバイブが鳴った。こんな時間にメールだなんてメルマガ以外無いだろうと推測しながらもきちんと確認すると、なんと先に帰ったはずのイヴェールだった。

―――
From イヴェール
Subject やばい

たすけて


―――


「は?」

まったくもって意味が分からない。なんでこんな頭の弱いメールが俺に送り付けられるのだ。何をどう助けてほしいのか打てば良いのに。イヴェールは確か試験で居残った俺を揶揄して悠々と家に帰ったのだから、用事とか無いはずだ。あったら学校で伝えている。もしかしたら理由も書けないほどに困惑した状況に追い込まれているのだろうかと一応考慮した俺は、駅の前で立ち止まって返事を打った。

―――
From ローランサン
Subject Re:内容は?

(本文はありません)


―――


―――
From イヴェール
Subject さわられた 

○○駅の○○○にきて


―――


―――
From ローランサン
Subject 触られた?痴漢?

(本文はありません)


―――


―――
From イヴェール
Subject 市ね

攫われた


―――


「………何この迷惑メール…」

誤字が多すぎて緊張感が全く伝わらないが、『攫われた』という文字を見てようやく彼がメールしてきた理由を理解した。誤字が多いのは慌ててるからだろう。イヴェールは容姿は綺麗だし目立つから、誘拐などという大事に巻き込まれているわけがないと簡単には否定しきれない。朝喧嘩を吹っ掛けてきたやつらが、俺とイヴェールの仲の良さを知って手を出したと十分に考えられる。その可能性がかなり高い。
俺はどうすべきか数分迷ったが、このまま家に帰ってイヴェールのことについてもやもや考えているよりはすっきりさせた方が気が楽だ。場所を聞いてしまえばこちらのもの。真実か否か分からないが俺は危険を顧みず親友を助けるために駅の中へと突っ込んだ。この時は疲れも全て吹っ飛んでいたと思う。全力で眠りたかったがそれどころではないのだ。仕方ない、愛しいベッドにはもう少し留守番してもらおう。




「うわ、本当に来た」

誘拐された被害者の第一声がそれだった。
携帯片手に店の座席に楽な格好で座っている。触られたり攫われたりした形跡が全く無い。彼の手にしているメニューにはパフェ食べ放題!と書いてあり俺の怒りを煽るには十分だった。死ねば良いのに。

「………てめぇイヴェール…説明してもらおうか」

「ここのパフェの二人前を平らげたかったんだけど、二人で頼んだほうが値段下がるって店員が言っていたから身近な友人を呼んだ次第です」

「紛らわしいわ!!触られたとか攫われたとか!!普通に呼べ!!」

「声でかいよローランサン。だってお前普通に呼んだら来ないじゃん」

「当たり前だろこんな甘ったるい店…!お前は女子高生か!」

「それそれ、女子しか来ない店に男一人でいるのが恥ずかしかったからというのもある」

「男二人の方が恥ずかしいっつの」

とかなんとか言っている間にイヴェールは店員に例のパフェを頼んでいた。彼の目の前に明らかに食べた後の皿が数枚重なっている。二人前パフェの前はケーキですか?どんだけ糖分を摂取するんだ?というかこんだけ食っといて太らない体型が不思議すぎる。お前の胃袋はブラックホールか。

「こちらの方は?」

「…………水で」

店員の笑顔に引きつった笑みを返しながらメニューも見ずに俺は返した。とりあえず走り回って疲れたので水分がほしかった。何故だろう、こんなに疲れているのに糖分が憎たらしく感じる。確実に目の前の友人の所為だ。よし、これで割り勘とか言いだしたらその脳天をグラスで叩き割ってやろう。


―――
苦労人ローランサン。
イヴェールの誤字の多さは、ケーキに夢中で画面あまり見ずに打っていたからというオチ。
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