(盗賊)

「男は皆馬鹿ばっかだよ」

「面倒な酔い方してるな…イヴェール。…あ、それ俺の」

「良いんだよ俺の方がワインの味知ってるんだから」

「ええ何それ…まあ良いけど」

「まずい」

「じゃあ返せ!……ったく、何が原因なんだよ…って聞いてほしいのか?」

「ああ」

「……何が原因なんだよ」

「はあああ?誰がお前みたいな能無しに言うか」

「うわあすげーめんどくせぇ…!」

「まあまあ、ちょっとそこ座りなさいよローランサン」

「…はあ。結局話すんだ」

「1週間前にさ、俺ら招待状偽造して貴族の嫁探しに付き合ってやったじゃん」

「ああ、美味しかったなあそこのワイン…。出される料理がいちいち美味くて腹立つよな」

「結果的に箱入り娘は盗めたわけだから、別にその仕事に文句を言うつもりはないけど」

「…食べ過ぎて腹下した?」

「違う」

「じゃあなに」

「………気付いてないのかローランサン?」

「え…うん、何を?」

「お前それでも盗賊の端くれかよ。俺と一緒に行動していたら嫌でも気付くだろ」

「えと、………イヴェールが不機嫌だったことくらいしか…」

「なら教えてやる。俺はあのパーティで女装しただろう?」

「白いドレスでな。個人的には赤とか派手なやつが似合うと思ったんだが。…で?」

「そんでお前が屋敷の中を探索している間に、顔も知らないやつに結婚申し込まれたんだ」

「はああ!!?イヴェールが!?おめでとう!」

「めでたくねーよ相手は男だ!」

「っぶは!まじで!?」

「殴るぞ馬鹿」

「ってぇ!殴る前に言えよ」

「その夜は丁重にお断りしたんだけど、その後もストーカーの如く背後に付いてきて、俺の顔見てあの日の令嬢やら男装の趣味やらしまいにはこの宿にまで手紙送ってくる始末。『ご存知より』って何時俺はお前の愛人になったつか知らねーよ誰だよあの男気持ち悪いな!!」

「荒れてるな―……てか、そんな手紙来てたんだ」

「お前は馬鹿だから文字が読めないだろう馬鹿だから」

「っ八つ当たりするな!」

「まあその日忍び込んだ盗賊がイコール令嬢とも俺とも見抜けてないみたいだから宿に来られても痛くも痒くもないが、俺の今のこの顔見て男装って、どこをどう見たら女に間違えるんだよ。脳髄がとろけてるとしか思えねぇ…禿げれば良いのに」

「…ん―?いや、間違えることもあるんじゃね?お前綺麗だもん。女顔だsっあぶねーなナイフ投げるな!!」

「ローランサン、俺の神経逆撫でするような発言は慎んでもらおうか」

「…で、どうすんだそのストーカー男。イヴェールが女だって信じ込んでるんだろ?」

「あまりにもしつこいから夫が居ると絶縁状を叩き出した」

「貴族の間じゃあ妻は妻、夫は夫で勝手に恋愛やってるだろ。嫉妬する方が教養が無いって思われる世界だ。絶対効果ないと思いま―す」

「や、だからローランサン。お前が行け」

「は?」

「明日の午後二時公園にて会う約束をしてきたから、お前が彼氏面して『俺の女に手を出したら殺す』的なこと一言二言脅してやれ」

「………イヴェールさん?状況が理解できません」

「動物の世界では強い雄が雌をゲットできます」

「説明になってねーよ」

「断ったって向こうが諦めないのは最初から知ってるんだよ。こうなったら奥の手を使うしかない。言ってみたかったんだろ?俺の女に手を出すなって」

「俺の女ってイヴェールじゃん。…イヴェールじゃねーか!」

「大丈夫大丈夫。その悪人面さらして威嚇すれば大体の雄は怯むから」

「どこの世界の常識!?」

「だから動物だって。男なんてみんなどーぶつだよ。俺を女と間違えるくらい能無しの馬鹿だからな」

「…お前も男だろ……それで、諦めるのかそいつは」

「ああ、ローランサンならな」

「多分凄く恥ずかしいんだけど」

「お前はたらしだから、女関連のトラブルには慣れてるだろ。俺は後ろでお前に惚れている演技をすれば大丈夫。この勝負勝てる」

「いつから勝負事に?つかそんなめんどくせーことする前に、その男にイヴェールの乳揉ませれば良い話じゃね」

「え?そんなことしたら股間に蹴り入るよローランサン」

「………申し訳ありませんでした…」
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