「どうですか!!」

私は自信満々に監督に詰め寄った。

「………うまい」

「やああああったああああああ!」

両手を上げてくるりと回転。
やったやった!やりました!
私と絵里ちゃん作昼食のカレーは無事、監督に認めてもらえましたー!

監督は私が部に入る前から噂に聞いていた通り、めーっちゃくちゃ怖い人。
すぐ怒るし、怒鳴るし、マネジだろうと容赦しない。
この前は「このタコっ!」ってグランドで盛大に罵られましたよ。
だから私は役立たずの汚名返上のため、今回の昼食は絶対美味しいの作ってやるーって宣言した。
その結果がこれ。
勝者、わたし。

ついでに近くにいる3年部員にも聞いてみよう!

「和さん和さん、どうどう?」

「ああ、すげーうまいよ」

「いぇーい!」

和さんスマイルいただきました!やったぜ!

「夏姫うるさい」

「すみません」

絵里ちゃんに怒られ、しょぼんとしながら私は自分の席についた。
目の前には自分の分のカレー。
うん。
うまい。
さすが私たち。カンペキだ。

「でも市販のルー使ってるんでしょ、美味しくて当たり前なんじゃないですか?」

隣りの席で利央が朗らかな表情で言った。悪意がない分、余計悪い。

「なんてこというの利央ー!さいてー!」

むっとして私が答えると、私の向かいの席の絵里ちゃんが大きな音を立てて机を叩いた。

…え?

今グラスのお茶が若干こぼれましたよ。

「絵里…ちゃん?」

「利央、食べ物に感謝できないなら食べなくていい。っていうか食べるな」

「えっ!あ、え、絵里さ…」

「食べんな」

怒ったー!
絵里ちゃんが軽くマジギレ!?

「…す、すんませんした。おいしいです、とっても」

「分かればいい」

つんとした顔で絵里ちゃんはまたカレーを食べ始めた。

おおおう。びっくりしたー!
でも、今のは本気ではキレてはなかったか、よかった…。

と思ったら、となりですっごく利央が小さくなってる。
絵里ちゃんの雰囲気に驚いちゃったようだな。

ひじで軽く押してから、小声で利央に話しかけてみる。

「りおー、バッカだなー」

「どどどうしよ、夏姫先輩!絵里先輩に叱られたァ」

「絵里ちゃんは正義感強いから、ああいう系はNG!おーけい?」

「お、おーけー」

「でも根に持つタイプじゃないし、これ以上変なこと言わなきゃ大丈夫」

「ほ、ほんとー?」

「うん、普段叱られ慣れてる私が言うんだから間違いない」

「そうっすね!」

「え、そこ素直に認めるの」

「だって本当のことじゃないですかー」

話してるうちに声が大きくなっちゃって、多分話してる内容は絵里ちゃんには筒抜けだろうけどいいや。
利央もぽろっと言っちゃっただけで、自分の発言の悪いところにはちゃんと気づいてるし、そのことを絵里ちゃんも分かってる。
それなら、もうこの話はおしまい。


「あ、えりりーん午後からは私たち何したらいいの?」

「とりあえず、最初はノックの手伝いとかかな」

「うんうん」

ちなみにドリンク作りは昼食作りと同時進行でやっていたのでもう出来ているのです。
わーい。

「きりがついたらまた厨房戻って晩御飯作りね」

「え、また作るの!?」

「当たり前でしょ」

「はーい…」

周りの1年生達が「夏姫先輩うまい飯期待してるっす」とか言ってくれるから夏姫先輩がんばるよ。絵里ちゃんと共に…。

ちらっと2年生たちが座る机の方を見てみると高瀬くんが座っているのが見えた。
おいしそうにカレーを食べてるのがわかり、うれしくなる。
よっし、さらに晩御飯美味しく作ろう!そう自分に気合を入れなおす。

「絵里先輩、晩メシのメニューってなんすか?」

絵里ちゃんの隣りの迅が口を開いた。

「ひみつー」

「ねえねえ、絵里ちゃんもしかして4日分の献立って全部もう決まってるの?」

「決まってなかったら困るでしょ」

「そりゃそうだ…ってえ!?絵里ちゃんが全部決めたの?」

「私意外に誰が決めるの?あ、でも和さんや監督とか顧問には相談した」

そ、そっか。
この合宿があることは私が部に入る頃には決まってたんだもんね。
私が知らない間に絵里ちゃんは仕事してたんだ。一人で…。

「じゃあ、私、その分これからがんばる!」

「うん、がんばって」

さらに気合を入れたところで、ちらほらと部員達が席を立ち始める。

「ごっそーさーん」

「あ、先輩方、向こうに水張ってあるんでそん中にお皿漬けといてくださーい」

絵里ちゃんの声が響く。皿洗いももちろん私たちの仕事なんですねー。
…やってやろうじゃん!

「なぁなぁ、この後って昼休みだよな」

「探検行こうぜ探検」

「おー!!」

毎年桐青はここで合宿を行っているらしいが1年生たちは初めてなんだ。そりゃわくわくするよね。
ってことはもちろん、

「私も行きたい私もー!!」

2年生だけど、合宿初めてだもん!
宿舎まだ見て周れてない!

「じゃあ夏姫先輩も行きましょー」

利央がノリよく言ってくれた。

「絵里ちゃん!いいよね!?」

「はいはい。いってらっしゃい」

「よっしゃー!」













レッツエンジョイ!!
(そうと決まれば夏姫さん早く食べて!飲み込んで!)
(待って待って!カレーは飲み物じゃないから!)

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