秋も終わって季節は冬。まだ雪は降ってないけれど、いつ雨が雪に変わってもおかしくないようなこんな寒さのなか、暖房がまだ効いていない学校で、生徒が密集してる各教室はどこも割と暖かい。
ただ、窓も扉も締切っちゃってるから空気はなんとなくどよんとしてて、誰かが風邪引いたらみんな一斉に風邪が移ったりするなかなあなんて思っちゃう。だからといって、今ここで窓をあけたらきっとクラス中からブーイングの嵐だろうし、私自身、寒いのは嫌だからこのまま暖かい空間の中で過ごそうと思う。




ちらり、と私はある人物に目をやった。
そこにはいつも通りの阿部がいた。

クラスのみんなもいつも通り。



そして私は自分の席を立った。






「あーべっ」


…んだよ、と少し不満そうな表情。貴重な10分休みという睡眠時間、放課後の練習のためにも眠りにつくつもりだったらしい阿部。
邪魔しちゃ悪いかな、なんて思うけどやっぱり私は今話したい。


阿部の前の席の子が今いないのをいいことに椅子に腰掛けた。誰も座ってなかったせいでちょっとつめたい。



「………阿部、好きだよ」
「………は?」


私が言うと阿部は本当にわけがわからないって顔をした。


「私、阿部が好きだよ」



突然の告白に阿部は驚いたようで、そんな様子に私はにやっと笑う。
作戦、成功!



「おまえ、なに言って…」


騒がしい教室。聞いてる人はいなさそう。


「目、覚めた?」


いたずらっぽく笑えば阿部はすごくいらついた顔で睨んできた。


「なんのつもりだよ」


「告白のつもり」


「あっそ」


めんどくさそうに阿部は寝る体制に入る。私は阿部の耳に冷たく冷えた手のひらをあてた。

「ねえってば」

「うるせー、やめろ冷たい」

「返事は?」

「知らん」

「なんでー」

「寝るから静かにしろ」


阿部はすぐに私を欝陶しがる。
ひどいひどい。


「阿部、ねー、すきー?」

「………」

「無視しないでよ」

「…………」

「好きって言ったら黙るから」

「…………好き」


小さな声でやっと返ってきた返事に私は笑う。

「じゃあ付き合いませんか?」

「……黙れよ…眠い」

「最後だから、」

「……」

「うんって言って」

「んー…」

「やったー」

満足行く答えが返ってきたので私はおとなしくしていることにした。

ロマンチックさは全然ないけど、告白して付き合ってくださいって言ってOKもらったんだもん。順番通り。素敵な休み時間を過ごせたよね。


阿部は冗談だと思ってるかな?
それでもいいや。
私自身、よくわかんないし。

ただ、恋愛における第一段階を上ったのは確かなんだ。
これからもっと勉強しよう。
次はなにをしたらいいのかな。






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