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||| ハール

「ハール様!ハール様は手品ができると、殿下から伺ったのですが……」
「殿下にも大層気に入って頂けたアレですね。見たいのですか?」
「是非!」
「では目を瞑ってください」
「はい!」
「……」
「……」
「……」
「は、ハール様……?」
「……」
「ま、まだでしょうか…」
「……」
「ハール様、そこにいらっしゃいますよね?私を置いて何処かに行っていたり、しませんよね……?
「……」
「め、目を開けてしまいますよ!ハール様!」
「……」
「……あ、あれ?ハール様、ずっとここにいらっしゃったのですか?手品は──んぐ、」
「──はい、たった今終わりました」
「……は?」
「随分と長い時間可愛らしいマヌケ顔を晒してくださった事、感謝していますよ」
「……えっ、て、手品は?」
「一言も手品を見せるとは言っていません」
「だ、だって殿下が」
「殿下も、一言も手品とは言っていない筈ですよ。手品など一度も見せていませんので」
「え?」
「種明かしが必要なほど難解な話ではありませんよ。貴方は目を瞑れと言われ、目を瞑り、ファーストキスを奪われた。それだけです」
「て、手品は……」
「騙されたという事にお気付きになられないのですか?」
「……!?」
「ご馳走様でした」
「で……」
「で?」
「殿下!殿下ー!!エミュール殿下ぁ!どちらにいらっしゃるのですか!?」


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「ナマエ、さっきから煩いぞ!!」
「で、殿下!ハール様、ハール様が、ハール様!」
「一体何をどうしたらそんな錯乱状態になるんだ……」
「ハール様が、その、手品を!」
「……ああ、お前も騙されたのか!なるほど、それで慌てていたのか。いい気味だ」
「殿下も騙されたのですか!?」
「そうだとも!……思い出すと腹が立ってきたな…」
「殿下も……」
「ん?なんだ、赤くなったり青くなったり忙しい奴だな、お前は」
「ハール様は…殿下にも……」
「ほ、本当にどうした?」
「私の……ファーストキス……」
「はあ!?」

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