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||| ハール

──木々が燃えている。揺らめく炎に家は焼け、姿は見えないのに人の悲鳴は至る場所から聞こえてくる。
今朝まで青く綺麗だった空は赤く、青々とした森は空と同化するように赤い。水辺という事もありどこか冷たかった空気は、酷く熱せられ呼吸一つさえ苦痛を伴う。
腕の中から、折角集めた果実の転がり落ちる音を聞いた。
ああ……何故、こんな事になったのだろう。
「どうして……」
ようやく喉から出た声は、酷く掠れて自分ですらまともに聞き取ることはできない。
もし生き残りが居るなら助けないと、救える命があるかもしれない。そう思い立ち上がろうとしても──目の前でどこまでも燃え上がる炎に飛び込む為の足は、震えて使い物にならなかった。

「……おや」

そんな中、背後から聞こえる一つの足音と、刃物が鞘から抜かれる音。それと同時に発せられた、耳に残る、この場に合わないゆっくりとした声が耳へと入る。
人が居る。そう思い、涙に濡れた顔で振り向いた先に居た男は、歪な笑みで私を見下ろしていた。

「驚いた、まだ生き残りが居たのですね」

剣の切っ先を私へと向け、燃え上がる森を背に。視界には炎に包まれた村を収め。黒い衣服を身にまとい、褐色の瞳を歪め、彼は静かに立っている。……おかしな程静かに。

「……あなたは、誰ですか」
「ああ、失礼。我々はディアネル帝国の兵、この村は邪魔だったので少し通り易くさせていただきました」

嘲笑を交えながら、まるで挨拶でもするかのように、事も無げに男はそう告げた。
いや、事実彼にとっては自己紹介なのだろう。この炎も熱も全て、私に苦痛を与えるための話題の一つ。
「手付かずの森を焼くのは実に効率的だ。村の家畜に加えて、森の動物は兵の食料になる。森と共存するとは良い餌を育みましたね、帝国の糧になる事を喜んで良いのですよ」
私の反応を見る事なく、人の心を刺すように言葉を続ける。
村に価値はあっても、私たちに人に価値はない。つまりは、そう、言いたいのだろう。
遠くで聞こえる人の声も少しづつ小さくなっている。代わりに聞こえ始めたのは、ベルのような鎧の音だ。





小説リハビリ中。続きはないです。
ハールさんの顔に釣られてドラガリ始めちゃいました。
村を焼かれたい。


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