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||| グレーテル

私にとって兄様はすべてで兄様以外必要なくて兄様さえいればそれで良くて兄様と一緒に居られる事が至上です。兄様さえいればそれで良いのです。でもなぜ作者を復活させようとしているのでしょう。
それを考えるたび私は無意識に視線を彼女に向けているようでした。
「な、なんでしょう」
兄様が必要と言った女。作者を復活させる為に必要な駒。道具。あれはそれ以外の何者でもありません。
だから私は返事をせず再び兄様へと言葉を投げかけます。
兄様、兄様、にいさま。それを聞いて彼女は小さく「うう…」と言葉を漏らし俯きました。
別に興味はありません。周囲にあの人形が現れてケタケタと笑って居ても心の底からどうでも良いと思いました。
けれど兄様はそれを止めろと言います。だから私は仕方なく兄様の言う通り人形の笑い声を止めました。剣で切り裂き首を転がして羽を落とす。ああ、これでやっと静かになる。
目に涙を溜めた彼女が私を見上げています。いっそそのまま喋らなければ兄様との会話を静かに楽しめるというのに。
「あの、」
ああ、煩い。けれど兄様の望みです、叶えなければ。道具は大切にするべき。仕方のない事です。そうですよね、にいさま。
「あ……ありがとう、ございます」
告げられたお礼の言葉。
無視しましょう、返事など必要ないでしょう。これは私が勝手にした事で、彼女が恩を感じる必要など無いのですから。
そう思った筈なのに、目が動かない。涙を溜めておずおずと上を見上げる姿が、怯えて震えて、それでも何かを成そうとする姿が。
何故か──とても美味しそうに見えてしまって。
「あの、グレーテルさん……」
「……兄様、私は…」
「あ……」
……震える目が、パンのように白い肌が。返事がない事に対しいつも通り俯く姿が。
彼女の何もかもが、あまりに。

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