DEAD
やっと来た、と思った。
足が凄く熱い。焼けるように熱く、火のような赤を噴いている。私の呼吸が荒くなるにつれ火は脈々と弱々しくなる。やっと来た。此がそれなんだ。私は胸の奥がじわじわと燃えるのを感じた。数年ぶりだ。覚えがある。まだ覚えがある、これは、――よろこび
「どいて、ちょっと、どけって!――きみ、大丈夫か!?」
誰かの声が間近に聞こえた。
「大丈夫です。」と私は言ったが、伝わっていない。物珍しい事故を見たがり取り囲む野次馬の喧騒のせいか、もしくは私の声が出ていなかったせいか。
声を掛けた人物が息を飲むのが聞こえた。私の足を見てしまったのだろう。私はうっすらと瞼を開いた。
よく日の昇った昼時だった。逆光で、真上にいるその彼の顔は何も伺えない。
「今助けるからな!」
「大丈夫です。」私はもう一度言う。大丈夫です。本当に。本当なの。
「死にたいんです。」
パクパクと、ほぼ口の動きだけの声が、彼には伝わったのか、また息を飲む空気の音が聞こえて、そして、汗をかいた手が私の手を取って握った。
「絶対に死なせないから」
その手は、真夏の日差しより私の足の患部より胸に沸く感情より、熱くて熱くて、焦がされそうだった。