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醜くて綺麗


(※微裏/名前変換無し/痛い描写/暴言/暴行?/暴力?/とにかくダークが酷い)



























紅の点が咲く
白い肌に
青の痣もいる
それを指先で、或いは掌でなぞり、撫でても、今の女は大袈裟に鳴いたりしなかった

ひくひくと、しくしくと、泣き続ける女を見据え、ただひたすら鬱陶しいと黒い男は感じる
先程まで体を焼くようだった熱情が急速に冷めていき
女の頬を張った


「うるせぇ女」

「な、…んで…っ、わた、しが…何、を!」


ギロリ

女の唇よりも体に残る点よりも血よりも紅い目を向ければ、あっという間にまた顔をくしゃくしゃに歪め、わっ、と女が泣きわめく

黒い男には耳障りだった
先程までだって散々自身の下で泣いていた筈だったが、もっと甘美で、腰を撫でる痺れを、もたらす心地よさがあったというのに、今は何でか障る
喉をかっ切ってやれば人の声は無くなるのだったか
ひゅーひゅーと風が抜ける音を立てながら泣く女ならばさぞ滑稽だろう

妄想を巡らせ、冷笑を浮かべる黒い男を、女の足が蹴った
ベッドに横になって泣いていただけの女の足が、寝返りの際に蹴っただけかと黒い男は軽く考えていたがそうではなかった
縁に腰掛け女に背を向けていた黒い男の厚みある背中が再度蹴られる
寝返りまで鬱陶しいとは何処までも気に障る
しかし泣き声の嗚咽はもう止んでいた





「死んじまえ!!!」



ドン、と鈍い音の三度目が鳴り、黒い男は押し出され床に転がった

は?

男は信じられなくて、転がったまま、しばらく目を丸くした
呆けているその間に、女が腹に乗ってきた、かと思えば男の首に手を置き体重を掛けてきたのだった


「死ね!あんたなんか!!」


見上げた女は相変わらず泣き足りなさそうな赤く腫れた目だが、見開かれ、つり上がっていて、鬼の形相とはこれか、と男が思うほど


「おもしれぇ、俺とやりあうってのか」


床に打ち付けた頭の痛みなど忘れるほど、男には楽しくて仕方がない
下から伸ばした手は簡単に、女の喉元へ届き、そして掴んでしまえば造作もなく握り潰せてしまうだろう
男はそれをしないように、適度な力加減で女の喉を徐々に、徐々に、狭めていく



「っ、…ぐ」

「蛙みてぇな声出すな」

「し…ぅ、ッは」

「もっとシめろよ、おい」


黒い男はいつの間にやら上体を起き上がらせ女と間近で対面し
そしてまたいつの間にやら、力が抜けて顔を赤くさせていく女をゆっくりと、首を絞めながら押し倒していた

死の縁に行く女をもっと見ていたいと、思えば、力加減など忘れて体重を掛けていってしまう
だが女の目から一滴こぼれ、それを追うように、瞼が閉じようとしたときにやっと、勿体無い、という考えが浮かんだ
気まぐれに、手を離してやれば、素直に空気に、生にすがり呼吸を再開して女が咳き込む
身を捩り、今更逃げようとするところを男は当然絡めとった


「も、う、……ぁ、ころして」

「殺せなかったら、殺されるしかねぇよな」

「っ、ふ…あんた、呪ってや、…ン、んぅッ」

ちゅ、ちゅ、とわざとらしく音を立てながら唇にしゃぶりつく
そうすれば、呼吸の邪魔なのか、単純に拒絶しているのか、男の下でどったんばったん暴れまわっている

最初こそ、本当に最初こそ、虫も殺せないようなひ弱さを見せ、先程までさめざめ泣いていた女なのに、これはどうだ、この醜い本性
それが男の目には何物にも代えがたい美しさとして映る
彼が引き出したのだ
誰にも渡したくない宝物を目の前にした気分だった

難なく押さえつけた女の細腕、小さい手
こんなものでこちらを殺そうとしていたとは、可愛いにも程がある
しかし、そう、だからこそ、男を終わらせ殺める手は
この男に堪らなく愛しいと思わせてしまった



「安心しろ、後でたっぷり逝かせてやるから」
「や、やめ――ッ!」



死に損なったこの存在と殺さなかったあの男を酷く恨んでいたがしかし
この女に殺されるのならばそれは誰も知らないこの男だけの至福かもしれない





11.01.15.(四-破)


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