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謹賀新年





「はいしゅうごーう」




名前が軽く手を上げて呼びかければ
グレイ、ムジュラ、イクサがそれぞれの早さで彼女の周囲に集まった

いったい何事かと首を傾げる三人に
名前はいかにも神妙な表情で重々しく口を開いた




「昨日で年明けだったわけなんだけど」



「新年?何ソレ食べレルの?」


「魔物である俺にはあまり関係ないな」


「影の世界って時間間隔曖昧だったしあんま気にしたことねぇや」




三人三様の反応を見せ
しかも全員あまり興味がなさそうだ


半眼になって溜息をつく名前を余所に
彼らはそこに用意してあった餅やら何やらに手を伸ばしはじめる




元から食べてもらうつもりで用意していたものなのだが
その様子を頬杖をついて眺める名前はもう一度溜息をついた

だが、口元は緩く弧を描いていて







「ま、今年もよろしく」






小さく小さく呟かれた言葉を
はっきりと聞きとった者はだれ一人いなかった

もりもりと餅を口に含むムジュラを横目に、喉に詰まらせないようにと注意すべきか軽く迷っていると
更にその横からの視線に気づく

イクサの夕日色の瞳がそこにはあった




「名前、今年からもよろしくな」


「ん…あ、ああ」



答えれば、イクサはにかっと歯を見せて笑う
口の端に餅の破片が付いていることは気にしてはいけない




「よろしく頼むぞ」


「へ? あ、うん。グレイもね」


「ほほひふー」


「ムジュラは飲み込んでから話しましょう」



名前の言うとおり口の中のものを全て飲みこんでしまおうとするムジュラだが

案の定餅を喉に詰まらせて悶え苦しみ出す
涼しい顔をして我関せずだったグレイに名前は水を持ってくるように促し
一応少しは心配したらしいイクサに背中をぶっ叩かれムジュラの窒息死は免れた







「あ、今更だけどあけましておめでとー」



誰も聞いていないと知りながら
名前は楽しそうな笑みを浮かべてそう言った








Happy new year!



09.0102.





* * *

空渡り の翡翠様より、お正月フリー夢をいただいてきましたぜ!
年明けに無頓着な三人がカワユイですね、ムフフ!さりげなく口のまわりにお餅つけて笑うイクサくんが、円の心を奪っていったのは言うまでもありませんね。

お正月を特別どうとも思わないような皆でも、儀礼的にでも、やっぱり挨拶を交わすと、自然に笑顔になりますね…ほかほかします。いつもは落ち着きがない彼らと、少し穏やかに過ごす、素敵なお正月の一時、確かにいただきました!(何)

翡翠様、ありがとうございました!


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