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エレクトリカルショック

(SmaXでXmas)






「ヂュー…」

びびびびびっ、とけたたましい音が絶えず響いている
大闘技場の地下にあらゆる機器の制御のための機関部があるのだが、そこでバリバリと火花を散らして呻いているのはピカチュウだ
様々なコードが生えたような丸いカプセルの中で、ピカチュウは退屈そうに電気を送っていた

「わ、ピカチュウだったの」

ウィーンと素早く開いた電動扉から名前が入室し、すぐピカチュウの存在に気が付いて少し驚いていた
普段と違う衣装の、赤くてフワフワした服で、大きな白い袋を背負った名前に、ピカチュウもクリクリの黒い目を大きくして驚いた

薄暗い部屋に所狭しと並ぶ何かの機械やパネルを避けながら、名前は奥の装置にいるピカチュウの元へ向かった
荷物が重く邪魔なのか、少々危なっかしい足取りである


「ピッカー」

「ピカチュウ、それ、わざわざ放電しなくてもいいみたいだよ、……あぁ…これどうやって開けるんだろ」



ピカチュウは首を傾げて素直に、何処に向けるでもなく放っていた電気を止めた
装置の脇のパネルとにらめっこを始めた名前の挙動を観察し、ピカチュウは何かを期待して長い耳をピコビコ動かした

程なくしてピカチュウを閉じ込めていたカプセルの側面が切り取られたように穴が出現
同時にそこから電光石火で飛び出した黄色に飛び掛かられて名前はとうとう背中から倒れた


「危なっ、も…プレゼントが壊れちゃうでしょ」
「ぴか、ぴーか?」
「うん、プレゼント、はいピカチュウ、メリークリスマス!」

がさごそと袋から取り出した物は真っ赤なリボンのついた電球だった
目の前に差し出されたそれをピカチュウは素直に受け取る、その瞬間、電球はぺかっと力強い白色光を放ち始めた

「ピィー!」
「ね、ピカチュウが持つだけで電気が通った」

ちゃぁ〜、と感嘆の声を上げ、キラキラと目を輝かせるピカチュウを見て名前も嬉しくなる

それにしても、と先程までピカチュウを捕らえていた装置に目を向けた
視線はやや厳しい


「マスターハンドめ、ピカチュウに酷いことするなんて」
「ぴか?」
「ごめんね、クリスマスイルミネーションが見たいなんて、私が頼んだから」


名前はマスターハンドの要望でサンタクロースの衣装を着るその代わりにマスターハンドに、クリスマスのきらびやかなイルミネーションでこの世界を飾ってほしい、と頼んだのだ
しかしその電飾の電気の供給源がピカチュウのそれだったとは、名前は此処に来るまで思いもしなかった



「もう、マスターハンドのプライベートエリアの電源カットしちゃおう!そんでイルミネーションの方に使っちゃおう」

「ぴっか!」


具体的に何をしているかの内容はピカチュウには解らなかったが、悪巧みのような面白さは伝わったようで、名前の肩に飛び乗りそれを促す
機関部のメインコンピュータにあたる巨大なディスプレイのふもとまで行き、マスターソードハンド用の巨大なタッチパネルを端から端まで忙しなく往き来しながら操作をして、電気供給経路の設定を変更
満足気に名前は笑って、ピカチュウと手を叩き合った


「じゃあピカチュウ、イルミネーション見に行こうか」
「ぴ?」
「その電球より綺麗で素敵なの!」

既に見てきたらしい名前の理想のクリスマスの光景を思い返して彼女のはやる気持ち
ピカチュウにも伝わっているようだ、楽しみで仕方がないと尻尾を揺らしていた

あ、でも…と名前が何事かを思い出したらしい
残念そうな恨めしそうな申し訳なさそうな、微妙な心地で、無邪気なピカチュウにそろりと視線を送った




「ピカチュウの電気強すぎて、電飾がショートしちゃってたんだ…」






10.12.21.


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