船乗りが一体何の気まぐれで、陸地で奥まった場所に位置するこんな片田舎にやってきたのか。そんなことを考えるより先に胸は高鳴っていた。
皮肉に歪む口元。流れる美しい金糸。モスグリーンの瞳。
全てにおいて、遠い存在のようだった。まるでそう、神話に出てくるような、現実味の無い存在。
今まで愛してきた男達だって悪い男では無かったけれど、こんな線は細くなかったし勇ましかったが美しいとは言い難かった。

そんな男に後ろから抱きしめられ、耳元に顔を寄せられ、ときめくなと言う方が難しい。彼の手が胸の上まで這っていき、一度心臓の辺りで止まる。

「鼓動が早いな。緊張でもしているのか?」

くく、と喉で笑われ熱が上がる。何度男と体を重ねようと、事が始まる前の僅かな緊張や高まる期待は止められない。だからきっと女は恋をする度変わるのだ。
そして私は、彼に染まり生まれ変わるのだ。






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