Novels | ナノ

アタックせよ!







休み時間、暇を持て余した俺と袁紹はあやとりをしながらだらだらと世間話をしていた
といっても辛気臭あーく本を読んでいた袁紹から俺が本を取り上げて無理やり紐を引っ掛けたんだけど
結局は紐の取り方にあーだこーだ言ってくる袁紹
俺はどうやら袁紹の扱いがうまいのかもしれない

「へぇー!張恰先輩と同じ部屋なんだ!いいなぁ〜」
「何がいいのかわからん!人のことを美しくないだなんだとうるさいし、」
「え、だってお前美しくなくね?」
「魏延とやらはあまりしゃべらんし…ってお前今サラッと失礼なことを…」
「あああバカ袁本初動くなよ!」
「あ、すまん」
「ったくもう!張恰先輩俺が中3の時に転校しちゃったからもう2年ぶりだな!」
「ああ。安心しろ、全く変わっておらん」
「いや、きっと美しくなってんだよ、美しくない者にはわからないんだな、きっと」
「く、貴様…あああそこは違うではないか!こちらの紐だ!」
「う、え!?ち、ちょっと待て落ち着け!」
「お前がな!?」
「なあなあお前ら、今暇か?」
「「ちょっと黙って!!」」

僅かな指先に力を入れて張り詰める俺たちに快活な声をかけたのはクラスのムードメーカー、孫策だった
さわやかスマイルがトレードマークで、汗の似合う孫呉二高のリーダー格である
教室でやたら声がでかいと思ったらこいつである
もう話のほとんどがこっちまで筒抜けで正面で俺になにやら一生懸命はなしている袁紹の話よりもこいつの話のほうがよく覚えているなんてざらである
が、そんなヤツの存在よりも俺らは今やあやとりに夢中で、手をぷるぷる震わせながら複雑に張り合う紐をどうにか正解へ導こうと
ひっかけたり引っ張ったりを繰り返し、ようやく袁紹が紐を離す、が

「あ、」
「あああー!」
「あ〜あ」

俺の手の間に張る紐は何の形もなさず絡み合っている
あ、と漏らしてばつの悪そうな表情で紐を見下ろすと袁紹から非難の視線がちくちく感じられる
うるせー!お前が2つ前に俺の知らないとり方しなきゃこんなことになんなかったんだよバーカ!
と思いつつ俺は手の内の紐をグシャグシャと丸めてしまいこんだ
ああぁ!?と声をあげる袁紹を無視して負けじとさわやかスマイルを浮かべて孫策の方を向いた

「で、何?えーっと孫策くん」
「き、貴様みょうじ!せっかくあそこまでいったのにだな!」
「孫策でいいぜ!暇ならバレーボールやんねえか?」
「く、話を聞かんか貴様!」
「おーいいねー!やるやる!袁本初はやんないんだ?」
「や、やらんとは言っていない!この名族がいなくては話にならんだろう!仕方ない、参加してやろう」
「も〜お前はめんどくせえな〜」
「おーしじゃあ体育館行こうぜ!」
「行く行くー!」



「わっかれ〜ましょ!」

その掛け声にグーを出したのは司馬懿と袁紹と馬超と俺
これは…!!
瞬時に俺はバッと手のひらを突きつけて主張した

「これは無効です」
「は、はあ?」
「何故だ?」
「何故ってお前、俺と袁紹と司馬懿が一緒だぞ!?見るからに運動できそうな2人と脳筋甘寧に勝てるかよ!」
「の、脳筋じゃねーし!!」
「みょうじ貴様どこまで名族を馬鹿に「無効意見に激しく同意」司馬懿!?」
「袁紹、その小さな脳をよく働かせてみよ……
貴様と私の運動能力を足しても脳筋一人に勝てん!!」
「だから脳筋じゃねーし!!」

悲しいほど客観的な計算から勝算無しと見込んだ司馬懿の同意によりやり直しが決行され
最終的に馬超、孫策、司馬懿、俺チームと甘寧、張遼、袁紹チームに分かれたのだった
まあこれが妥当だろう…いや俺だって平均なんだ!ただこの学校の主に招待生の身体能力が常軌を逸しているだけで
…いや…俺も招待生だけどさ…
しかし見るからに体育会系で体格も優れる孫策や馬超、甘寧はもとより、
一見文化系で甘党、とキダムとは無関係に見える張遼までもが時折人間離れした運動能力を発揮するのだ
俺入る学校間違えたかな…

同じチームになり俺にチッと舌打ちを打った司馬懿に一発気合いの拳を入れてから馬超とやらに向き直る
こいつもなかなか声がでかい
しかしこいつの話は孫策ほど把握できない
何故なら話が支離滅裂だからだ
何度俺が「何故そうなる!!?」と目の前の袁紹の脳天にチョップをかましたか知れない

「ぐっは!おま、みょうじ…許さん…」
「おうよろしくな、馬超くん、だっけ」
「こちらこそよろしく頼むぞ!馬超と呼んでくれ!」
「うん、ところでさ…


…その兜、素敵だな」
「おお!そうだろう!」

えへへ、お前は良い奴だ!と兜をほめられ嬉しそうに言う馬超に笑顔でうなずき、決して何も突っ込まないことにした
うんうん、良い笑顔だ…俺は何も突っ込まないぞ…

サーブのじゃんけんに負けた袁紹を真顔でゲシゲシ蹴っている張遼をスルーし、孫策がいくずぇ〜とサーブを打った
ボールが出した音が半端ない。わかってはいたけど一瞬ボールが破裂したのかと思って後ろを振り向くが
そこにはさわやかに着地した孫策がいるだけだった
ジャンプサーブしたの!!??プロいね!!??
どうしようやっぱりこいつらキダムだ…!

「うぉ!?早ぇな!」
「甘寧殿!トス!」
「よし来た!アターック!」

いつの間にかブロックに飛んでいた孫策の腕の横を通り過ぎたボールは、俺と司馬懿の間の床を叩いて跳ねていった

え…どういうことだろ、コレ…

あっと言う間のハイレベルな戦いに目をしばたかす俺と司馬懿と袁紹
その前で甘寧のハイタッチに何故か拳を叩き込む張遼はまたも口をもごもご動かしている
どうやらやつらはキダムごときではない
シルク・ド・ソレイユだったようだ…

「へえ、お前らが連携プレイなんてな!」
「勝利のため、己が武を発揮するのみ!」
「へへー、そちらさんのチームワークも期待してるぜ?」
「言うじゃねーか!見てろよ!」

俺と司馬懿は依然として突っ立ったままそのやりとりを聞いていた
だが俺は聞き逃さなかった。司馬懿が小声で「ありえん…」と呟いたのを。

「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない!孫策!フォーメーションをメタモルフォーゼだ!!」
「おうよ!」
「えっ何、何をするというのだ」
「ついてこいよ司馬懿!陣形を変えるぞ馬鹿めが!!」
「くっ…!(逆に何故孫策には通じるのだ…!)」

そもそも俺と司馬懿が隣ってのは死角がありすぎたそこを刺せと言ってる様なもんだ
孫策、俺、馬超、司馬懿の順に前後しながら構えなおすと張遼がサーブを放つ
動きがいちいちプロくてむかつく。見本かお前らは!!

「俺が取ろう!!」
「馬超!」
「てやああーーーっ!!!」
「う、うるさ…」
「いくぜ馬超!!トス!!」
「うおおおぉぉ正義の槍!!受けて見よ!!!とあああぁああーーっっ!!」
「うるさい」
「てやっ!名族レシーブ!!ぎゃああああ!!!」
「ああー名族の骨が折れたぁぁーー!!」
「張遼さん頼むぜ!!トス!」
「任せよ!私が挫く!!」
「ブロォォーック!!!」
「フフ、孫策殿!ワンタッチ取ったりィィ!!」
「やべ、なまえそれとって!!」
「え?それってボール?うわ、わああああ」

言われるがままにボールを追いかけ、追いかけ、バカヤローと手を伸ばして俺は地面とこんにちはした

「ナイスレシーブなまえ!!」
「いけるか孫策殿!!」
「おうよ!!来い!!」
「いくぞォ!!てえぇぇぇーーい!!!」
「どりゃああぁあ!!!」
「暑い…」

俺が死に物狂いであげたへろへろボールを馬超が膝をつきながら何とか上手くアンダーであげる
孫策が打ったボールは豪快な音を立てながら相手のコートから跳ね上がった
一度もボールに触ってない上に暑がってる司馬懿を除き俺たちは超笑顔で手を上げた

「よっしゃあ!返してやったぜ!!」
「うむ!涼州の士の強さよ!!」
「いや、お前以外涼州の士じゃないし」
「よくやったななまえ!!偉いぜ!」
「もっと運動音痴かと思っていたがやれば出来るではないか!」
「えへへ!うるせえよ」
「…」

ハイタッチに入れない司馬懿の背中をぽんとたたく

「さ…次はお前の番だぜ司馬懿」
「え…?な、なにを」
「袁紹も腕折ったし、俺も今のでアバラ2,3本逝ったし」
「折れと!!??」





Back
Top

-
- ナノ -