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論破せよ!





「以上をもち、肯定側の立論を終了する」

そう言っていつもより眉間の皺が深い司馬懿は席に着いた
今は倫理の時間。
教科担当は蜀高出身の小柄な魔法使い、ホウ統先生である
教科書の解説中に質問や意義が乱立し、無駄に頑固な生徒たちは対立する意見に一向に引こうとせず、
ホウ統は真っ向からやらせるのが妥当だと考えたのだった
そしていつの間にかなにやら本格的なディベートに移行していた
肯定側は司馬懿、袁紹、なまえの3人、否定側は甘寧、孫策、馬超の3人である
隅っこでちょこんと座って討論を眺めているホウ統の代わりに教卓に立ち、チョコをかじりながら「では否定側立論をどうぞ」と促すのは張遼である

「はーい!俺たちはまず、悪いことをした奴でも殺すのは良くないと思うずぇ!」
「あと、別に20歳になってなくても酒やっても良いと思うぜ」
「それはならーん!!」
「むしゃむしゃ、ただいまの立論に対し、肯定側、質疑はありますか」
「どう返せと言うのだ馬鹿めがあああ」
「あの、否定側の言いたいことが良くわかんなかったんすけど…」
「否定側、今の質疑に応答をお願いします」
「蜀の正義は俺が守る!!」
「肯定側、質疑は以上ですか」
「答えになっとらんではないかああ」
「バリバリ、では否定側、肯定側の立論に対し、質疑はありますか」
「あの、フツーにお菓子食べんのやめてもらえますか…」
「はーい!はいはい!」
「はあ〜い!!」
「むぐむぐ、ではまず孫策殿から」
「よっしゃあ!えーっと、俺は前々からおもってたんだけどよ!!」
「待てい孫策!その時点で質疑ではなかろうこの馬鹿め!!」
「次、馬超殿どうぞ」
「この際であるから声高に言おう!!俺は鍛錬の授業を取り入れるべきだと思う!!!」
「質疑と言っておろうがこのうつけぇい!!!」
「うわああああん!!貴様ら全員死ねいこの馬鹿めがああああ!!!」
「よってたかってこの名族を馬鹿にしおってえええ!!!うおおおん!!」

「ホウ統先生…ごめんなさい…許してください…」
「おやおや、泣くんじゃないよみょうじ」

扇をばたばた振り回してあばれまくる司馬懿
ごろんごろん床を転がって泣き喚く袁紹
悪くもないのにホウ統に泣きながら土下座するなまえ
こんな状況下でも驚きの落ち着きを見せるホウ統は椅子から降りてなまえの背中をぽんぽんと叩いてやった
討論は結局肯定側の号泣で幕を閉じた
わんわん泣かされた司馬懿と袁紹となまえに恐る恐る甘寧が近寄てみるが、
なまえの背に触れた瞬間右ストレートで吹っ飛ばされたのだった

「みょうじ殿。このグミをあげるから泣きやまれよ」
「張遼…あ、ハリボだ…」



地獄絵図のような状況を冷静に処理し再開された授業
まるでこうなることがわかっていたかのようにいつもの調子で「さ、もう一回教科書を開いてごらん」と促すホウ統はなまえには仙人のように見えた
突然意味不明なことを言うでもなく、独特の声色で解説を進めるホウ統の倫理になまえは幸せをかみ締めた




(その夜202号室にて)
「あ〜腹減ったーなあ、今日は食堂行かね?」
「…」
「…」
「ちょ…おい、無視すんなよ」
「司馬懿、お腹空いた〜」
「では今日は食堂にでも行くか」
「(昨日まで犬猿の仲だったくせに!)」
「今の時間混んでないかな?」
「2人分の席ならとれるだろう」
「あそっか!」
「俺が悪かったああああ!!!!」



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