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4年数学βクラス!








「…あの、先生から質問があります
お前らなんでここにいんの?」
「やだなあ先生、中間テストのクラス替えで僕らここになったじゃないですか…!ニコッ…!」
「早く授業始めません?」
「うるせーよてめ…ゴホン、赤木くん君中間満点だった気がするんだけど気のせいかな?」
「ああ、あれ…。
あれ先生が問題作ったでしょ、ククク…
ぬるいぜ…!」
「上のクラスに戻れアホンダラァァ!!!!」

ここは学校法帝愛学園福本高校2年生の教室
数学の時間、成績で分けられた2つのクラスのうち、ここは下…
つまり、上からα、βの内の「数学βクラス」である。

しかしながら、教卓の前に並んで座る3人はこの学年の首席を争う面子
左から宇海零、赤木しげる、平山幸雄である

「宇海!平山!お前らもαに戻れ!」
「だめですよ、もう決まったんですから…!」
「俺も…」
「くっ…この小鬼めら…!」
「先生、俺今日予習やって来たんだぜ、偉いだろ?」
「それが普通だタコ助!」
「先生、口悪いですよ、怖いなぁ」
「にこにこしながら言うな!お前の方が怖いわ!!」
「起立、礼」
「おま…平山!何勝手にお願いしまーす」

なまえが律義に礼をしたのが面白かったのか、微かに吹き出す3人に咳払いを一つすると、
課題プリントの答え合わせを始めた

「じゃあ端から…田中、鈴木、高橋!1〜3を黒板で解いてー」
「先生、俺は」
「平山はまだだめ」

ふと3人のいる方を見れば、アカギは机にプリントを出していない

「なんだアカギ、今日はやってきたんだろ?」
「予習は。」
「…テスト最終日に出した課題は?」
「必然…やってないっ…!」
「威張るなこのオタンコナスー!!!」

喝を飛ばすなまえに、フフ…と笑うアカギ
その笑みにまたツッコミが飛ぶ前にアカギが種を明かす

「先生…何で俺がこのクラスに編成されたか知ってるかい…?」
「何度も言うが知らねぇよ!」
「それは…授業態度並びに課題提出率の悪さ…!!」
「廊下に立ってろォォ!!!」

スパーンと丸めた教科書でアカギに面を食らわすなまえ
零が体罰(笑)と言いながら指を差して笑うのにカチンと来たなまえは零へとその矛先を向けた

「宇海くんは何でβクラスなのかな?」
「(ニコッ…!)」
「、……………わ…わかった…」

それ以上は怖くて聞けなかったと後になまえは語った

「平山は?」
「っ……

…が……から……」

「あ?」

「だ、だからっ…

う、浦部先生が…怖いから…」
「「アッハッハッハッハ」」
「わ、笑うな!」
「「ハッハッハッハ」」
「笑うなって…この!」
「やめいこのすっとこどっこい3人組が!!
このクラスにいてもいいけど静かにしてろよ!」
「「「はーい」」」

最早教師と生徒でなくやんちゃと保護者である
がやがやと騒ぐ4人におどおどと今まで黒板で問題を解いていた生徒が恐る恐るなまえに話しかけた

「あ、あの…先生、終わりました」
「ん、ああ、ありがとな!」

いつもの先生に戻り、黒板に向き直って数式の添削を始める
それを見て、解答した生徒は席に着いた
なまえは優しい先生として人気が高いのだ
赴任して1年という若手で授業も拙くはあるものの、解説はわかりやすく人柄も手伝って生徒の支持を集めていた
まあ、目立つ生徒になつかれたのが皮切りという見方もあるが。

「まる!そうそうこの式から展開しないとな、よくできたぞ」

成績下のクラスというレッテルを貼られながらも頑張る生徒に正面から向き合うこの教師の前で
何やら例の3人が退屈し始めたようだった

「だから、あの遠藤っておっさんが怪しいんだってっ…!」
「でも、カイジさんって言や、坂崎って女と噂だぜ?」
「ククク…世も末だな…」
「馬鹿だな、カイジさんが喜んでないの一目瞭然じゃないか」
「なっバカっていうな!バカ!」
「フフ、あながち外しちゃいないな」
「なんだと!?」
「皆バカだこの問題児がぁぁ!!!」





「えーっと、それは…xとyの値が等しいから?」
「そう、だからaとbの値がここでもう出る。その次、高田、ここで出たaはどこに代入する?」
「え…うー…」
「求めたいのは次はzの値だから…?」
「あっ…式Aに代入…?」
「そう!じゃあ宮原、答えは?」
「えーっと、a=7、b=5、x=13、y=13、z=28」
「そう!よしよし、じゃあこの形式の練習47〜51をやってくること」
「なまえ先生ってさぁ…真面目にやってるとちゃんと先生なんだね」
「(ちゃんと先生ってなんだ!いつも真面目にやってらあ!)」
「クク…少し甘いがな」
「(当たり前だろβクラスなんだから!だからαいけって言ってんだろーが!!)」
「でも俺、みょうじ先生クラスで良かった」
「…」
「「…」」
「…え?あっいや、…(カアアァ)」

ノートを取り終えて平山が顔をあげると、固まって自分を見るアカギと零となまえ
それにハッとして、自分の無意識に言った事の、本心だがあまりのストレートっぷりに赤くなってノートに視線を落とした
だいたーん、と言ってくすくす隣の2人が笑う中、
なまえの「し、私語は慎む!」というちょっと焦った声が聞こえた
うー、と目線をあげられずにいると頭がくしゃくしゃっと雑に撫でられた

「っ!」
「つ、次の問題!」

見上げたなまえの頬は少し赤かった









「頼みますよ浦部先生〜…」
「あんさんにはすまんけど、わいには無理や」

教官室、なまえは机にうなだれて隣りの机に座る浦部に懇願する
浦部はコーヒーカップを傾けながらあっさりと流した

「ええやないの、あいつらあんさんには懐いとるようやし」
「だったら苦労しませんよ!もー言うこと聞かないしほっとくとうるさいし…」
「わいの授業じゃ一っ言も口きかんかったがな」
「え!?そうなんですか」
「おー。なんや赤木は目ェ合うと黒ーい顔でニヤニヤしおっておっかなくって問
題なんか当てられんし
宇海も宇海でえらい爽やかな笑顔で拒絶しよるし」
「うわ…」
「平山は終始俯いて硬直しとるし」
「ははは…」

なるほど、確かにベテランの浦部先生とは言え厳しいかもしれない、と
予想以上の強敵になまえはため息をついた

「(だがならば尚更俺には無理なのでは!?)」
「それにあいつらのクラス分けの理由、知っとるん?」
「聞きましたよ…いや、宇海には聞けませんでしたけど…
2人が2人とも酷い理由でしたがね!」
「ああ、態度がどうのこうのっちゅう?」
「そうそう、全くそんなんで来られても困りますよね」

唇を尖らせるなまえに浦部は声をあげて笑った

「っははは!」
「え、な、なんです…?」
「や、すまんすまん、ちゃうねん、それ」
「は?違うって、なにが?」
「や、あんな、あいつら確かに問題児やけど、そんなんでクラス変えたりはせえへんのや」
「じゃあ今すぐ引き取ってください」
「まぁまぁまぁ、こっからやって。
あいつらこれから毎回満点とったるから文月先生のクラスに変えろ言うて駄々こねはじめたんや」
「へ…?」
「もうわいとしちゃこれ以上願ってもない要望やった…!」
「あの、腹立つんでイキイキしないでください」
「ええやないの、教師冥利につきる事実やで
まあわいはそれと引き換えに心と授業に安寧がもたらされたわけやけど」
「くっ…素直に喜べないっ…!」

個人的な要望を通すのは事情がある場合の特例だが、点数が下がらないなら問題ないだろうと、
浦部は<多少希望的観測を織り交ぜて>判断したらしい
それを聞いてなまえは確かにこれからの授業に一抹の不安はあるものの、
確かに嬉しかった
そして、あの問題児達を少し可愛いと思えたのだった


「はいじゃあプリント回収しまーす」
「例の如く…未提出…!」
「廊下に立っとけェェ!!!!」



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