虹色クレパス




また、だ。

また、霧野先輩キャプテンと話してる。

こんなの小さい子供の独占欲と対して変わらないじゃないか、と自嘲する。自覚してる分、よけい痛いなあ、なんて。

何が、って問われれば、俺は躊躇いなくこう答える。全部、痛いんだよ、と。

「…天馬くん?」

「狩屋!」

狩屋が、疑問符を飛ばしながら走り寄ってきた。どうした、何かあったのだろうか。

「あっちで練習付き合ってくれって。」

ほら。と狩屋が指を指す方には、剣城と信助。ああ、成る程。多分、剣城は巻き込まれたんだな、って思う。

「わかった、すぐ行く――!」

よ。

そう続く筈だった言葉は、突如背後から腕を引っ張られた事により発する事を許されなかった。なんだなんだ。一体何が起こった。

「だめ」

ふわりと、柔らかな匂いが鼻を掠める。目の前に立っていた狩屋が、ゲッとあからさまに顔を歪めた。

「天馬は俺と練習すんの」

「霧野先輩!」

とゆー訳で、こいつ借りてくな。

霧野先輩は狩屋達の返事を待たずに、スタスタと早足で歩みを進める。依然と腕は掴まれたままだ。

「あ、あの霧野先輩……どうして…」

「だってさ。」

少し苛立ちが含まれた棘のある声。きっと今霧野先輩は、眉間にシワを寄せているだろう。

「……俺だって天馬と練習したいのに、あいつらばっかり……。だから今日は、俺に付き合ってな?」

不意に霧野先輩はこちらに振り返り、悪戯が成功した子供のような笑みを俺に零した。あーあ、霧野先輩のばか。

霧野先輩に免じて、キャプテンと話してばっかりだった事は許してあげようじゃありませんか。ね、狩屋。



―――
2012****.
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