rtされた数だけうちのこに媚薬飲ます
「実験だ。」
そう言って上官から渡されたのは液体が入った透明な小瓶。数にして9本。中途半端な数だな、というのが木嶋が受けた最初の印象だった。一本を手に取り蛍光灯にかざして見る。特に色も付いておらず、蛍光灯の光が透明な液体越しに降り注ぐ。
「飲め。全部だ。」
冷たい声が命令を下す。
与えられたどんなものか、というのは今のところ木嶋には一切伝えられない。たまたま治験の対象にでも選ばれたということか。
「……Sir, yes, sir」
内心、舌打ちした。授業中、飽きたからと教室を抜け出し廊下を歩いていたところをたまたま通りすがった上官に声をかけられた。そのまま部屋に連れ込まれ、お小言でも聞かされるのかと思ったら……これである。これならば教室で寝ていたほうがマシだったか。渡された薬を全て呷りながら木嶋は後悔した。うっすらと舌に残る苦味に眉をしかめる。
「……飲み終わりました、sir」
「うむ。ならば後はこの部屋で好きにしていろ」
扉の向こうに消える上官、扉の閉まる音。残されたのは空の小瓶と木嶋だけだった。実験の意図も何も伝えられず、挙句の果てに放置である。募る苛つきに壁を蹴りそうになるが、部屋に設置されたマジックミラー越しに動く人影に気付き、木嶋はなんとかその衝動を抑えた。試しにマジックミラー越しに上官らしき人物を睨みつけるが、勿論反応は一切帰ってこない。
「チッ」
無意識のうちに舌打ちをしていた。これも聞こえているのだろうか。……まあいい。聞こえたところで何も言われないのは、先の時点でわかっていることだ。ならばもうすることは一つ。寝るだけである。薬の反応を見るのが目的なのだろうが、好きにしろと言われたのだ。こちらはその通りにするだけだ。寝転がろうと壁に向けて一歩踏み出した、その直後である。突然の動悸を木嶋が襲った。それに合わせてかっと顔が熱くなり、汗が吹き出す。
「……あ゛?」
意に反して膝から力が抜ける。床に膝をつき、胸の辺りの服をぎゅっと握りしめた。痛みを感じるほどに心臓が、全身がドクドクと脈を打つ。それに、それだけではない。痛みに身悶え、服と肌が擦れる度に、身体の奥底から別の感覚が沸き上がってくるのだ。その証拠に、一切触れていない股間が膨らみを示している。
「……気分はどうだね?」
いつの間にか部屋に入っていた上官は、木嶋の正面に立つと呻く木嶋を見下ろした。
「……す、っげー…最悪です、sir」視線も合わせず、声を絞り出し、今の気持ちをそのまま報告する。
「そうか」と短いながらも返ってきた声には喜びの色がありありと現れていた。上官のつま先が木嶋の顎を掬う。抵抗する力もなく、木嶋は上官を見上げた。飲み込みきれなかった唾液が口からこぼれ靴を濡らす。見上げた先にあったのは、にやにやとだらしない"男"の顔だった。
「脱ぎたまえ」
――ああ、なんだ。そういうことか。その言葉でやっと上官の意図を理解する。実験と言いながら、木嶋は上官のクソッタレな趣味に付き合わされていただけなのだ。
「何をしている?脱げと言っているのだ」
動かない木嶋に腹を立てたのか、上官は再度告げる。クソッタレ。内心で呟く。正直、唾を吐きかけても良かったのだ。胸糞が悪いのは確かである。しかしそれをしたとて、上官に殴られるか、蹴られるか。どちらにしろ酷い暴力が返ってくるのは目に見えている。力の入らぬ今の身体にいつものような反抗は望めない。ならば、と木嶋は笑った。
降ろされた上官のつま先を見つめながら、震える指先を自らのシャツにかける。素直に従い始めれば、上官は満足そうに頷いた。……まともな思考をしていればこんなことは決してしなかっただろう。しかし抵抗さえしなければ、悪い扱いをされないことを木嶋は知っている。だってこの男は自分の欲を発散したいだけなのだから。酷いことをするつもりなら、初めから股を開けと命令すればいい。しかしそれをしなかったのは、上官も"楽しみたかった"のである。全く、全く悪趣味である。降ろされたジッパーの間から出された男の昂ぶりが木嶋の口元に寄せられる。
「咥えろ」
きっとこれも命令なのだろう。ならば、従おう。与えられるであろう快楽を享受しようではないか。薄く笑いながら木嶋は口を開いてこう言った「――Sir, yes, sir」と。


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