木嶋出張中
気まぐれな中の人が暇なために、木嶋に戦場に向かってもらった。そんな数日の一コマを抜き出し。
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(倒せど倒せど敵は絶えず、次から次へと増え続ける。戦場では刃が振り下ろされ、矢が飛び、拳がぶつかり合い、耳をつんざく程の銃声が響く。木嶋はそれにも臆さず、目の前を塞ぐ敵に対して次々と打撃を与えていく)「おら、次ぃ!」(叫び声の響く戦場で木嶋は笑っていた)
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(鋭い刃が肉を抉り、鮮血が散る。白い制服を木嶋の血が赤黒く染めあげる。痛みに喚くことなく、むしろその表情は喜びに満ちていた。今自分は生きているのだと実感していた。戦場で、互いを傷つけて笑う男が一人。鉄と硝煙の臭いは男をただ昂らせるだけだった)
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(銃を持つ相手に、俺の胸はここだ、と自分の胸を叩いてみせる。刃を持つ相手に、切るならここだ、と手刀で自分の首を叩く。)「殺すなら一気に頼むぜ?」
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(渡された食事は粗末なもので、決して美味しいと言えるものでは無かった。しかし文句を言える立場でもなく、無言でそれを胃に詰め込んで行く。食べれるだけ食べなければ体が持たない。明日もまた戦場を駆けるために、今日はもう寝ることにしよう。おやすみ、と小さく呟いた。)
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(静寂が支配する闇の中、木嶋は弾かれるように飛び起きた。心臓が早鐘を打っている。夢の内容は覚えていないが、異様な不安だけが胸に残っていた。夢見が悪くて目が覚めたなど本当に久し振りのことだったのだが、恐怖より慣れないくすぐったさの方が勝り、木嶋は僅かに笑ったのだった。)「……こういうの、戦場では死亡フラグとか言うんだったか?」(その声に応えるものは、木々のざわめき以外誰も居なかった)
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(庇うつもりは全くなかった。無意識のうちに身体が動いていたのだ。肩に弾丸を受けながら見た、絶望感に満ちた部下の顔はもう一度見たいとは思えない程酷いもので。きったねー顔、と内心嘲りなが、ゆっくりと地面に倒れこんだ)
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(寿司詰め状態のバスに揺られながら、木嶋はぼーっと外を眺めていた。結果的に部下を庇うことになり、身体はボロボロで満身創痍である。あんな顔は二度と見たくないし、説教も勘弁である。けれども心地よい疲労感に包まれており、目を瞑るとすぐに眠りに着くことができたのだった。)


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