イッシュ地方へ 1/3







「シーナ!審判頼むな!」

研究所のバトルフィールドから声をかけるサトシ
あれからシューティ、サトシと共に研究所の裏にあるバトルフィールドに移動し これからシューティとサトシの勝負が始まろうとしている
勝った方が私と勝負するらしいがどうでもいい
勝手に審判を頼んでシューティはさっき決めたツタージャを、サトシは相棒のピカチュウをフィールド内に出している
この中で審判をするのは明らかに私なのだろう
軽くため息を吐きながら両方のポケモンをそれぞれ見る

『…これより シューティ対サトシのバトルを始める
ポケモンは1体のみでどちらかが戦闘不能になれば試合終了だから』

「頼むぞ!」

「ぴっかっちゅう!」

サトシの言葉に返すピカチュウ
するとまた機械音が聞こえ 音がした方を向けばシューティがデジカメでピカチュウの写真を撮っていた
いちいち写真を撮らなくてもいいだろとか思っていたのはサトシも同じだったらしい
サトシもシューティに言えば旅の記録らしい
そんなもの、デジカメの電池がいくつあっても足りなくなるのは目に見えている
軽くため息を吐き 2人の様子を見て声をかけた

『…それでは、始め』

先攻をとったのはサトシのピカチュウ
でんこうせっかを指示し 相手の懐へと突っ込んだ
正面からでんこうせっかを受けたツタージャだったが何とか持ち堪えた様子ではある
シューティのツタージャは体当たりで攻撃に対し サトシのピカチュウは避ける指示を出す
あのツタージャ自体もかなり動きは早いがなんとか避けきったピカチュウもかなりバトルには慣れているみたいだ
避けきれたピカチュウによし!と喜ぶサトシ

「ピカチュウ!10まんボルト!」

10まんボルトと言えば電気を溜めて一気に放出させる技
ピカチュウも電気を溜めて技を繰り出そうとしたが

「……ぴか?」

何故か不発で終わった
これにはサトシもピカチュウ自身も驚きの様子
その一瞬にツタージャが体当たりを繰り出し ピカチュウに当たった
ピカチュウは体勢をなんとか立て直し サトシはもう一度10まんボルトの指示を出す
そして再度試すも不発で終わってしまった様子
これほど立て続けに不発で終わるのはおかしい
一体ピカチュウの体に何が起こったのかは予想も出来ないが調べた方がいいのは事実
それに今、電気技が使えないと言う事は物理攻撃しかできないということになる
あのピカチュウは見たところ物理攻撃が少し弱い

「ツタージャ!グラスミキサー!」

シューティの言葉に尻尾を器用に使って木の葉を巻き込んだ竜巻を作っていく
サトシもなんだ!と驚いた様子に対し 知らないのかと呆れた様子のシューティ
初めて来たばかりならわかるわけがない
アブソルも聞き慣れない技に珍しく起きてバトルを見ている
この子、普段は相手のバトルに興味を見せないからね

「やれ!ツタージャ!」

シューティの言葉にその竜巻はピカチュウを巻き込み 地面を抉ると共に消えた
その場には戦闘不能になったピカチュウ
電気技が使えないなら話にならない

『ピカチュウ戦闘不能
ツタージャの勝ち、よって勝者はシューティ』

その言葉と同時にピカチュウに駆け寄るサトシ
そんなサトシを見てシューティはフッと笑いながらツタージャをボールに戻した
そして言い放つ

「君 基本からやり直したらいいよ」

だがその言葉は今のサトシには聞こえるはずもない
ピカチュウを抱きかかえて研究所に戻っていくサトシ
その後ろ姿を目で追いかける私

「シーナ」

名前を呼ばれた方を向く
次の言葉が何かぐらいは予想できる

「約束通り 勝負してもらうよ
それとも逃げるつもり?」

その言葉に私はアブソルの名前を呼ぶ
アブソルは意味がわかっているため バトルフィールド内に入る

『好きに始めて』

私の言葉に少しムッとしながらもシューティはツタージャを繰り出す

「ツタージャ!体当たり!」

アブソルに体当たりを繰り出すツタージャだが、アブソルは軽く避ける
そして避けたと同時にツタージャにふいうちの攻撃をするアブソル
結構力強く攻撃したようで 思いっきり吹き飛ばされたツタージャ
あの子、バトルの時は手加減なんてしないのよね

「どういうつもり?
ポケモンだけ出して君は指示を言わないの?」

シューティの少し怒りのこもった声が聞こえる
でも勘違いしているようだ

『私を知っている人はアブソルを出した時が1番戦いが難しいと言う
それは何故だと思う?』

静かにシューティに問う
シューティはどういう事だと聞き返す
私はまた静かに答える

『私がアブソルに技の指示を出す事はまずない
アブソル自身が状況を判断して技を出すから どの技を繰り出すかわからない』

「…それじゃあシーナがアブソルに技の指示を出す時はいつなの?」

その質問に私はシューティを真っ直ぐ見て答えた

『私がおもしろいと思ったらよ』

その言葉にシューティが私を睨みつけながら 今のバトルが面白くないのかと聞いてきた

『貴方が私に勝ったら面白いと認めるよ
でも私より弱い奴を認めるつもりなんて元からないから、面白いバトルを見せて』

冷たく当たる私に目を少し見開くシューティ
私がそんな優しい人に見えるのだろうか
私は人間が嫌いだ
これでもまだ優しい方だと思っていてほしいものだ

「っ…ツタージャ!グラスミキサー!」

悔しそうに指示を出すシューティ
ピカチュウとのバトルとアブソルの攻撃でかなり体力を消耗しているツタージャはピカチュウに繰り出したグラスミキサーをするために尻尾を使って器用に木の葉の竜巻を作り始める
だがアブソルはその時に見つけた隙を見逃さなかった
ツタージャの前からふっと姿を消したアブソル

「なっ!?」

「つたぁ!?」

驚くシューティとツタージャ
だがツタージャの前にどこからともなく姿を現したアブソルはそのままおいうちを繰り出してツタージャを吹っ飛ばした
そのままツタージャは木に当たって戦闘不能

「ツタージャ!」

急いでツタージャの元に走って行き 戦闘不能になったツタージャにお疲れ様と声をかけてモンスターボールに戻すシューティ
物凄い勢いで吹っ飛ばしたから かなりのダメージを受けたのだろう

『お前は手加減しないな』

「あぶそぅ」

当然とでも言うかのように私の方を見て鳴くアブソル
私はアブソルの側に寄ってお疲れ様と言いながら頭を撫でた

「…シーナはずるいね
サトシは自分で強いとか言ってたのにすぐ勝てたから、君にも勝てると思っていたのに 予想以上の強さだなんて」

苦笑いをしながら私の側に来るシューティ

『勝手に決め付けているから痛い目を見るのよ
調子に乗った勝負をこれからもするつもりなら、勝負を受けるつもりはない』

最初に痛い目を見ていた方がいい
言った言葉に偽りはないけど
本気の勝負じゃないなら受けるつもりはない
私も指示を出すほど面白いバトルだった訳ではないけど、勝負の行末を適当に見てはいない
自分のパートナーのバトルを適当に見るだなんて最低だと思うから

「…そうだね シーナの言う通りだ
今回は調子に乗っていた僕が悪いね」

ふっと笑って私を見るシューティにそうねと言葉を返す
そして私は鞄の中からある物を出してシューティに渡した

「これは…げんきのかけら?」

そう言って私が渡した物を見るシューティ
シューティの言う通り げんきのかけらを一つ渡した

『シューティが選んだツタージャは悪くない
上手く育てれば強くなるよ』

そう言って背を向けてアブソルと共に研究所の方へ歩き出した

「…旅の中で会ったら またバトルしてもらうよ!」

シューティのその言葉に反応は見せなかったけど、強くなったらと心の中で答え 研究所に戻った








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