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『あ、もしもし?』

〈あ〜… リーシャか
おはよう〉

『おはよう パパ』

今日のパリの天気は快晴 気温も3月の割にはほんの少しだけ暖かい
そんな中 朝から背中にある物が入ったケースを背負い 肩には授業に必要な荷物を入れた鞄をかけ、片手にはほんのり温かいトースト 反対の片手は携帯を耳に当てながらコンセルヴァトワールに続く道を進んでいく私
私の名前はリシャルツェ・ヴィエラ
イタリア産まれで世界的有名な指揮者でもあるセバスチャーノ・ヴィエラの娘でもある

『この前の公演 お疲れ様』

〈ありがとう リーシャも元気か?〉

『えぇ いつも通り元気にやってるわ』

世界的有名な指揮者の父はいつも各国を周っている
今はちょっとした休みでイタリアの家に戻っている
そして私はパリでアパルトマンからコンセルヴァトワールに通っている
そのため久しく父と母に会っていないため 電話はするようにしているのだ

『あ、パパ 私日本の桃ヶ丘音楽大学ってとこで1年間の交換留学をすることになったから』

いきなり本題に入った途端 電話越しで軽く咳き込んでいる音が聞こえた
あまりにも唐突過ぎただろうか

『大丈夫?』

〈だ…大丈夫だ…
その事は彼に話したのか?〉

『前々から交換留学生に選ばれるかもしれない事は話してたけど 結果がわからなかったからリブーロ先生にはこれから話す』

世界的有名なクラリネット奏者で今も現役として各国で演奏をしているペルクール・リブーロ
その人は父の友人であり 私の師匠でもある

〈そうか 彼なら大丈夫だろう
私も反対はしないさ、しっかり勉強してくるんだよ〉

『ありがとう パパ』

それから少しだけ話して学校に着く少し前に会話は終わった



「それじゃあ決まったんだね」

『はい』

あれから午前の授業は終わり、お昼も済ませて 大学内のリブーロ先生の部屋にいる
そして目の前で微笑みながら紅茶を飲んでいるのはさっき説明したリブーロ先生
5歳の時、楽器がしたくてクラリネットを吹き始め 父の友人であったリブーロ先生にすぐに才能があると言われ 忙しいのにも関わらず弟子として教えてくださった私の師匠
そして今はレッスン前にいつもするリブーロ先生とのお茶会
今日は紅茶と私が焼いたクッキー
実は少し早く起きて焼いたのよね

「うーん 今日のクッキーは紅茶の風味がかなりするね」

『今日は茶葉を少しだけ多くしてみました
どうですか?』

「美味しいよ また腕をあげたね」

『ありがとうございます』

そう言って美味しそうにクッキーを食べるリブーロ先生
小さい時からお菓子を作って食べてもらっていたから先生の好きなお菓子はほぼ知っている
ちなみにリブーロ先生の好きなお菓子はチョコケーキ

「それでいつから日本に行くんだい?」

『来週には日本にいるつもりです』

「また急だね」

苦笑いを見せるリブーロ先生に急に決まったのでと答える
先生も納得したようで紅茶を一口飲んだ

「それじゃあ当分の間はリーシャとお茶が出来ないのか…
リーシャのお菓子はとても美味しいから大好きなのに」

そう言いながら寂しそうにする先生
先生は私としかお茶をしないらしい
リブーロ先生に教えてもらっている生徒に聞けば 先生とお茶をするなんてあり得ないらしい
まぁ 長い付き合いだからっていうのもあるのかもしれないけど

『1年の我慢ですよ
1年後にはお菓子も楽器もひと回り成長して帰ってきますから』

「…リーシャなら出来るよ
頑張ってきなさい」

微笑んで答えたら リブーロ先生の表情は寂しそうな顔から笑顔へと変わった
そして先生の言葉に私も嬉しくなって笑顔を返した
それからまた10分ほど先生とお茶会をしてから最後のレッスンが始まった





さぁ 来週には日本





これからどんな事が待っているのだろう






序章
(リーシャ お土産待ってるよ)
(何がいいですか?)
(そうだね… やっぱりリーシャの作ったケーキがいいね)
(それじゃあ1年待ってくださいね)
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序章完成!
温かく見守っててください!

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