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▼ ルカ


目が覚めて、着替えて歯を磨いて…そんな私のありきたりな朝の風景。しかしたまーに不可解なものを目にすることがある。

「…ん?」

ある朝のことだった。いつものように鏡の前で着替えをしていたら、自身の腹部というか腰近くに見慣れないものがある。なんだろう。そう思って鏡をよく見るといくつかの赤い痣だった。少し上半身を捻れば、背中側にも何個か痣がある。

虫刺されで済ますにしては無理があるかなあ…。そう疑問に感じながらも変わらない日常を過ごすこと数日。

「あれ…」

またまたとある朝。鏡を見てびっくりした表情の自分が映る。視線の先は自身の腰元。昨日まで痣が薄くなって安堵していたのに、何故かまた色鮮やかに痣が濃くなっていた。なにこれ。

「というわけで、ルカに質問があります」
「ナマエ、どうかしましたか?」
「とぼけないで…この薬のことだよ!」

穏やかに微笑むルカに向かって、私はとある薬を突き出す。とある薬の正体は簡単に言ってしまえば睡眠導入剤だ。先日、寝付きが悪いと嘆いていたら、偶然近くを通ったルカがこの薬をくれたのだが…。

「この薬、副作用があるでしょう!」
「…副作用?」

確かに目覚めはすっきりなのだが、痣みたいな赤い痕ができるなんて聞いていないぞ。そう文句を言えば、彼は首を傾げ思案顔になった。

「この薬に、そのような副作用などなかったと思いますが」
「え?そうなの?」

顎に手をあてて静かにそう答えるルカ。私はてっきり「副作用がでる薬なんていらない」という理由で、彼にこの薬を押し付けられたかと思っていたんだけど…。よく考えたらルカがそんなことをするわけがない。聞く限り、彼に似た症状は出ていないようだし。

「そもそも、なんでルカはあの時こんな物を持っていたの?」
「…人間、精神的に疲れているとなかなか寝付けないものなのですよ」
「ああ…」

困ったようにそう言うルカを見て、なんとなく意味が分かった。我が解放軍は個性的な人たちばかりだから、常識人の彼にとっては疲れることもあるのだろう。それならば、睡眠薬を所持していてもなんの疑問もない。

「なら、この赤い痕はなんなんだろう…」
「特に害がないのなら、気にしなくてもいいと思いますよ」
「うーん…それもそうだね」
「腰元なんて、人前で晒すところでもないですからね」

柔らかく微笑むルカ。実質、この薬には睡眠面で大変お世話になっている。彼の言う通り腰元なんて露出しないし、私が気にしなければいいだけなのかもしれない。

「さっきはいきなり突っかかってごめん、ルカ」
「私は別に構いませんよ、見返りはもらっていますから」
「…見返り?」

ルカの妙な言い方にひっかかりを覚えながらも、私はその場を後にした。ひっかかりと言えば、先ほどの会話でもそうだ。

「"赤い痕"とは言ったけれど、場所までは伝えていなかったのになあ…」

彼はどうして"腰元"だと分かっていたんだろう。少し疑問だ。


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