※斬魄刀異聞篇後





 あなたは知らない。私がどれだけあなたを案じて、あなたの帰りを待っていたのか。
 裏切りという行為のさらに裏、そこにあなたの真意があると私は信じていました。あなたが私たちを裏切るはずがないと、そう思っておりました。たとえ刀を向けられようと、冷たい瞳に射られようと。
 私はただ、あなたの無事だけを祈っておりました。そして、やはりあなたは私たちを裏切ってなどいなかったのです。
 とても、嬉しゅうございました。現世であなたのお姿を確認したとき、私は何よりも安堵したのです。あなたが敵へ刃を向ける姿を見て、この戦いが終わればようやくあなたは帰って来てくれるのだと。
 私があなたを呼べば、あなたはどこか驚いているような顔をなされました。そのときのあなたの瞳は、以前の冷たい瞳ではなく、いつもの優しい瞳でした。だから私も、あなたを見つめる眼差しにできうる限りの優しさを詰め込みましたが、どうでしょうか。きっと、あまりうまくはいかなかったでしょう。ですが、喜びの色に満ちあふれていたのは確かです。あなたが帰って来てくれることが、何よりも嬉しかったのですから。

 ――ねぇ、兄様。

 私には、やはりあなたが必要なのです。私にとって、あなたは誰よりも大切な家族なのですから。










(かけがえのない、たった一人の私の兄様)

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