「恋次!」
「おう、ルキ、ア……!? お、お前……何て格好してんだよ!」
「む? ああ、この格好か」
「まるで花魁じゃねえか!」
「そうだな」
「そうだな、って……何でンな格好してんだ!」
「仕方なかろう。そういう設定なのだ」
「設定?」
「うむ。現世の“映画ポスター”とやらがテーマらしく、今から撮影会があるのだ」
「撮影してどーすんだよ」
「そこは大人の事情だ」
「げっ! 出やがったな、大人の事情!」
「というわけでだ、少し行って来る」
「……大丈夫かよ。そんな格好でうろついちまって」
「案ずるな。撮影会は女性死神協会が行うからな」
「余計に安心できないんですけど!」
「場所は技術開発局を使わせて頂くらしい」
「絶対に危ねェ!」





「むむ、心配性な奴め。撮影会は私だけが呼ばれているのではないのだぞ」
「……は? 他にもいるのか?」
「当然であろう。一護や日番谷隊長、浦原や夜一殿、さらには市丸まで呼ばれているそうだ」
「ハァ!? ほとんど尸魂界にいねえ連中ばっかじゃねえか!」
「それも大人の事情だ」
「汚ねえ……! つーか、一護や市丸の野郎まで呼ばれてるってのに、何で俺が呼ばれてねえんだ!」
「さあ? その変眉が原因なのではないか?」
「関係ねえだろ! くそっ、何か悔しいぜ」
「今日一日はきちんと一人で隊務をこなすのだぞ」
「何で俺一人なんだよ」
「言ってなかったか? 兄様も撮影会に呼ばれているのだ」
「はあああああ!?」
「馬鹿者、それこそ当然であろう! 兄様が呼ばれぬはずがない!」
「いやいや! 隊長はンなこと一言も言ってなかったぜ!」
「兄様は最後まで断固拒否しておられたからな」
「でも結局行くんだろ?」
「撮影会には夜一殿も来られるからな」
「……ああ、なるほど」





「つまり隊長は、夜一さんのせいで強制参加ってことか」
「そういうことだ」
(……隊長も夜一さんには敵わねえんだな)
「しかしだ! 兄様には悪いのだが、私は夜一殿に感謝している」
「……何で?」
「普段、滅多にこのような撮影会には参加されぬ兄様が参加されるのだ! それだけで心躍るというものだろう!」
「躍らねえよ。むしろ今日は隊長がいないせいで、俺の残業は確定だ」
「それは貴様の無能さのせいだろう。兄様のせいにするな」
「ぐっ……!」
「ああ、兄様の軍服姿……さぞお似合いになるだろう」
「軍服? 朽木隊長、軍服なんて着るのか?」
「そうだ。きっと一番お美しいぞ、兄様は」
「……何か楽しそうだな、お前」
「そうか? まあ兄様の軍服姿は楽しみだがな」
(ドンマイっス、隊長……)
「そろそろ時間だ。ではな、恋次!」
「……おう、気ィつけてな」
「うむ!」
「本当に大丈夫かよ……」





「すみません、お待たせしました」
「おう、ルキア」
「一護! 何だ、まだお前だけか?」
「いや、冬獅郎と市丸はもう来てるぜ。奥で待機してる」
「そうか。兄様と夜一殿と浦原は?」
「まだみてえだけど……」
「お待たせしましたー! お久しぶりっスね、朽木サン」
「浦原! ……お前のその格好は何だ」
「よくぞ訊いてくれました! 似合ってるでしょ? これは現世で大ヒットした有名映画、レッド……」
「ところで、夜一殿と一緒ではなかったのか?」
「え、訊いておいて無視ですか?」
「ルキアはこーいう奴なんだって」
「……そうですね。半裸の黒崎さん」
「人を変態みたいに言うんじゃねえ! 俺だってもっと他のがよかったっつーの!」
「うるさいぞ、貴様ら。夜一殿はどうしたのかと訊いている」
「夜一サンなら、渋ってる白哉サンを引きずって来るって言ってましたけど」
「……白哉も大変だな」
「まぁ、白哉サンが夜一サンに勝てる日は来ないと思いますけどね〜!」
((言っちゃった……!))





「あ、来たみたいですよ」
「おぬしもしつこいのう、白哉坊」
「黙れ、失せろ、腕を離せ」
「撮影が済めばな」
「私は撮影会になど参加せぬと、何度も申しているであろう」
「ほほう、よいのか?(キラーン)」
「……」
「ふむ、では泣き虫だった小さい小さい白哉坊の話でも……」
「!? 夜一!」
「泣き虫? あの白哉が……!?」
「兄様が!?」
「そうじゃぞ。たとえば、あれは儂が……」
「黙れ! 貴様、それ以上戯言を申すならば許さぬぞ」
「戯言とな? はっはっはっ! 笑わせてくれるのう、白哉坊。すべて真実だというに」
「貴様……!」
「ふふ、撮影会に参加するじゃろう、白哉坊?」
「くっ……」
((な、泣き虫……すごく気になる!))





「ほれ、早う着替えに行かぬか。おぬしだけじゃぞ、白哉坊。他はもう着替えておる」
「そうっスよ、白哉サン。黒崎サンなんてずっと半裸なんですから」
「だから人を変態みたいに言うなーッ!」
「……」
「お前もそんな侮蔑した目で見るんじゃねえ! このっ……泣き虫お坊っちゃん!」
「き、貴様……誰が泣き虫だ!」
「え、ちょ、ギャアアアアア! すいません! 俺が悪かったです! だから半裸に千本桜は勘弁してェ!」
「自業自得だな」

 ――5分後。

「はぁ、はぁ……(グッタリ)」
「あちらで着替えて来い、白哉坊」
「……服は」
「部屋に用意してある」
「……」

 ――ガチャ。

「もー! 遅いですよ、朽木隊長!」
「!?」
「早くお着替えしよう、びゃっくん!」
「服はこちらです」
「待て、なぜ兄らがここにいる」
「だって今回の撮影会、女性死神協会が行ってるんですよ?」
「! 聞いておらぬ」
「別に何でもいいじゃん! さ、びゃっくん、脱いで!」
「ふざけるな!」





 ――十分後。

「でーきた! うん、我ながら完璧ね!」
「びゃっくんカッコイイ! ね、ネムネム」
「はい、会長」
「これが軍服か?」
「はい!」
「……なぜ、髪を結ぶ必要があるのだ」
「だって朽木隊長の髪、すごく綺麗なんですもの! せっかくだから少し弄っちゃおうかなって」
「……」
「あっ! ダメだよ、びゃっくん! 外しちゃ!」
「なぜ」
「似合ってるもん! それに、いつもと違うびゃっくんも大好きだよ!」
「……意味がわからぬ」
「ともかく、今回はこれでいきましょう! 朽木隊長、綺麗ですよぅ」
「まったく嬉しくない」

 ――ガチャ。

「終わりました、か……兄様……!?」
「白哉!? おまっ……すっげえ雰囲気変わるな」
「黙れ」
「に、兄様! 軍服姿、とても綺麗でお似合いです!」
「……そうか」
「はいッ!」
(あたしのときは嬉しくないって言ってたクセに……朽木隊長ったら)





「しかし白哉坊……おぬし、おなごに見えなくもないのう(ニヤリ)」
((夜一サンンンンン!? それ禁句!!))
「……何?(ピキッ)」
「儂は本当のことを申しただけじゃが?」
「貴様……」
「止めて来いよ、浦原さん(ボソボソ)」
「ムリに決まってるじゃないっスか(ボソボソ)」
「ではみなさん、こちらへどうぞ。撮影会を始めます」
((助かった……!))
「ふん(フイッ)」
「くっくっ、からかいがいのある坊じゃ」

 ――技術開発局特設撮影室。

「遅いぞ、てめえら!」
「なんや、エライ珍しい面子での撮影やねぇ」
「いやぁ、みなさんすみません。白哉サンが駄々をこねるもんスから」
「浦原、兄様のせいにするでない!」
「誰がいつ駄々をこねた」
「え、六番隊長さん?」
「何だ」
「いや、雰囲気ちゃうなぁ思いまして」
「ふふ、ほれ見ろ。みな考えることは同じじゃ」
「市丸は、私が女に見えるなどと一言も言っていない」
(……ちょっと思うたけど)





「じゃあ撮影開始!」
「みなさん、そこに並んでください」
「こうか?」
「バカねぇ、アンタ! そんな普通のポーズでどうすんのよ!」
「ポーズまでつけるのか……」
「乱菊、こんな感じはどや?」
「あら、イイじゃない! 雰囲気出てるわ」
「ふむ。では儂はこのような感じでどうじゃ」
「バッチリですよ!」
「じゃあアタシも」
「うん、イイ感じです! さ、四人も」
(えー……)
(わ、私もポーズを決めねばならぬのか)
(松本の野郎ッ!)
(……帰りたい)
「さ、早く早く!」
「こ、こんな感じか?」
「もう少し腕を伸ばして!」
「こ、こうか?」
「まぁOKかしら。次は日番谷隊長!」
「どうしろってんだ(イライラ)」
「その杖、構えてください」
「こうか?」
「うーん……ま、イイですかね」
(この野郎ッ……!)
「松本副隊長、これでどうでしょうか……?」
「あら! 素敵よ、朽木」
「あ、ありがとうございます!」
「じゃ、最後は朽木隊長ですね」





「……どのような“ぽおず”をすればよいのかわからぬのだが」
「あ、朽木隊長はポーズ決めなくても大丈夫ですよ。少し立ち方を変えて、こっちを流し目で見て頂ければ」
「? 流し目?」
「そんなに意識しなくていいですよ。こんな感じに立ってもらって……ハイ!」
「!!(う、美しすぎます兄様!)」
「ポーズ決めてねえのに一番決まってんのがムカつくな……」
「昔に比べてずいぶんと色っぽくなったのう、白哉坊」
「夜一サンもすっごく色っぽいっスよ?」
「当然じゃろう、喜助(ニタリ)」
「じゃあ撮るよー!」

 ――カシャッ!

「完璧です、会長」
「みなさーん、お疲れ様でした!」

 こうして無事に撮影会は終了した。

「兄様! 軍服姿、とても麗しゅうございました!」
「……そうか(麗しい?)」
「はい! このルキア、感動致しました」
「……私は……」
「?」
「……私は、お前の方が似合っていたと思う」
「!(真っ赤)」

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