体中に流れる血液すべてが、不安という感情を伴って流れている、そんな気がした。この感情は、徐々に体を突き破り、姿を表し始めている。
愛する妻の寝顔はとても穏やかで儚く、それ故に恐ろしい。日に日に体調が悪化し痩せていく彼女を見ていることしか、私にはできないのだ。
「……緋真」
頼む、私を置いて逝かないでくれ。
小さく薄い手を握りしめ、言葉に出せもしないことを願った。口にしてしまえば最後、現実になってしまうような気がして。彼女を苦しませてしまうこともわかっているから。ただただ私は、心の内で叫ぶのだ。置いて逝かないでくれ、と。
「……緋真」
彼女の目が覚めたときに笑えるよう、今のうちに目一杯顔を歪める。柄にもなく、泣きそうになってしまった。
「……愛している」
だから、どうか私を置いて逝かないでくれ。